複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.108 )
日時: 2014/04/20 23:31
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: UcSW/zmZ)

 Act.11 想いはせる少女 見つめるその先には


 ジナ・ジャスティン。

 空中戦艦バハムートに配属されているドラグーン候補第三期生。

 年齢14歳、スリーサイズ、体重は内緒。

 栗色のサイドアップの髪、瞳は深緑色、染み、ソバカス、ニキビは無し。

 趣味は読書、特技は早寝早起き、しかし食事は時間を掛け、良く噛んで取るのがモットー。

 家族は父母、弟と妹の五人。共に艦内コロニー都市の住民。

 アタシたち第三期生は、ほとんどがコロニー生まれなので地上がどんな状況なのかはデータベースの情報でしか知る由がない。

 ただ漠然と、荒廃した、『竜種』が闊歩する不毛な世界なのだろうということが窺える。



 『竜種』

 20XX年、突如として出現し、世界中のあらゆるすべてのものを喰らい始めた異形の生物。

 人類を食物連鎖の頂点から転落させたこの謎の生き物には、当時、現代科学の既存兵器は一切効果を示さなかった。

 打倒すべき手段が見い出せず、大量発生した竜種に人類は成す術も無く蹂躙され、数多の文明都市は滅び、人類は衰退の一途を辿った。

 だが、当時世界でもっとも技術力があった生化学企業『エキドナ』が竜種に対抗できる画期的な兵器を開発させた。

 それが『ドラグーン』である。

 ドラグーンは、竜種に対する人類の切り札であり、希望だった。

 竜種を唯一駆逐できる、同じ抗体組織『竜種細胞』を取り入れた最新技術の粋を集めた戦略人型起動兵器だ。

 しかし、この兵器を起動させるには搭乗する人物に竜種細胞を投与し、適合させなければならない。

 しかも適合被験者はすべて十代の少女たちだった、いや、彼女たちでなければ『ドラグーン』は起動しなかったのだ。

 幾多の実験と多大な犠牲を払い、ドラグーンに搭乗し、日夜戦い続けたパイロットの少女たち。
 
 偉大な先人たる彼女たちの活躍のおかげで、こうして人類は生き残る事が出来た。

 そして今日に至るまでに発展、進化した竜種細胞研究、ドラグーン工学の技術革新の数々、実に感慨深いものがある。

 

 「・・・ふうっ、凄いなあ。昔の人は・・・」

 タブレッドのデータベースを閉じ、ジナはラウンジのテーブルに顎を乗せる。

 「どうしたの、ジナ?黄昏ちゃって。食欲が無い・・・訳じゃないか、きっちり完食してるものね。おかわりまでしてるし・・・」

 テーブルに突っ伏すジナにトレイをもった同い年くらいの青髪ハーフアップの少女が話しかけ、向かい側の席に座る。

 「嗚呼、ケイ。・・・アタシは人類の歩んできた歴史の重みを感じているの、英雄たちの軌跡を・・・。それに、それだけじゃない。現エースパイロットの先輩たちも、もの凄く強くて、かっこよくて・・・。はあ〜っ、自分がミジンコに思える・・・」

 ブツブツ言うジナにケイは、スプーンでオムライスを口に運びながら、呆れ顔で話す。

 「また、その話?他人は他人、あなたはあなたでしょ?比べたって如何しようも無いでしょう?それぞれ善い所も悪い所もあるんだし・・・」

 「うう〜、そうなんだけどね・・・。アタシはもっとこう・・・」

 その時、ラウンジに別種の緊張感が走り、急に騒がしくなった。

 
 何事かと、ジナとケイのふたりも見ると、噂をしていたドラグーンのエースパイロットの三人がやって来ていた。