複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.109 )
日時: 2014/04/19 23:18
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: F1B4nr3O)

 バハムートのラウンジ。

 テーブルにセツナ・アオイ、エリーゼル・ヴァン・ハイム、マリア・アースカードが席を同じくし、食事を取る。

 皆が緊張している理由は、ラウンジには滅多に姿を現さないエースパイロット、セツナ・アオイが同席しているからだ。

 エリーゼルとマリアが互いに会話しているが、セツナは黙々と食事をしている。

 話しかけるな、と言うオーラが目に視える様で何とも近寄りがたい雰囲気である。

 三人とも凄腕の竜機乗りで、候補生たちには憧れの存在なのだ。

 優美で華麗、それでいて気丈かつ柔らかな物腰の紅の女騎士、エリーゼル。

 小さく愛らしく、可愛いくも明黄の利発なマスコット少女、マリア。

 そして、基本人前には姿を見せない少女、セツナ。怜悧な視線、冷静で寡黙、常に人を寄せ付かせない気配を纏う蒼い孤高の戦士。

 その三人が一緒に会話?をしているのは非常に珍しい事なのである。

 「あれ?セツナさんがいるなんて珍しいね。ドラグーン出撃の時ぐらいしか見かけないよね。・・・ジナ?」

 ケイがジナ見る。

 ジナはジッとセツナを視ている。

 周りのみんなもセツナたちを遠巻きに見ているだけで、話しかけようとはしない。

 恐れ多いのだ。

 命の危険に晒されているのは皆同じだが、彼女たちは直接竜種と対峙し、艦を、皆を守るため己を顧みず戦う。

 自分たちとはどこか次元が違う存在として無意識ながら畏怖し、距離を隔てているのかもしれない。

 何より、憧れでもある存在に、尚且つ衆目の前で拒絶されたら、気が弱い者なら卒倒か、ショック死でもしそうである。

 「ねえ、ジナ」

 「なに、ケイ?」

 ジナが視線をセツナたちから離さず、オレンジジュースの入ったカップを傾ける。

 「先輩たちに話しかけたら?」

 ブフォーッ!!

 ジュースを吹き出すジナ。

 ギョッとする周りの乗員。

 「ゲホッ!ゴホッ!!な、何言ってるの、ケイ!?アタシみたいなのがそんな、おこがましいにも程があるよ・・・!!セツナさんに話しかけるなんて・・・!!」

 ケイの発言に咳き込みながら声を潜めて慌てるジナ。

 「・・・ほほう、わたしは『先輩』としか言ってないのに。なるほど、ジナはセツナさん狙いか・・・」

 「きゃあああああっ!?何で、やめてっ!エスパーか!?アタシの心を覗いたな!?」

 「・・・落ち着いて、ジナ、変に目立ってるから。丸分りよ?あなたの態度」

 ジナがあたふたするのを苦笑いして諌めるケイ。

 「・・・違うよ、そんなんじゃないよ。ちょっと思ったんだ、アタシもあの人たちみたいにみんなを守ることができるのかなって・・・」

 「ジナ・・・」

 困った様に笑うジナ。

 いつか自分たちも竜種と戦わねばならない日がくるだろう。そのために日々訓練をしているのだ。量産型ドラグーンによる戦闘訓練はシュミレーションを主としているが、肉体的にも精神的にも過酷なのだ。

 簡易的に操作、微弱化させた特異な竜種細胞を投与し、ある程度適合率が高ければ誰でも(少女限定は変わらないが)搭乗できる最新の技術で製造された量産型ドラグーン。

 個人特化したドラグーンに比べ、性能は劣るが汎用性は非常に高い。例え搭乗者が降板しても、新たな簡易竜種細胞を投与し、情報を書き換え、次なるパイロットに乗り換えられる。

 簡易竜種細胞が与えるメリットは少なくデメリットも少ない、その分、性能差を補うため搭乗者は過酷な訓練が必要なのだ。