複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.110 )
- 日時: 2014/04/19 23:03
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: F1B4nr3O)
黙々と食事をするセツナの間を見計らい、ジナは意を決して話しかけた。
「あ、あのドラグーンパイロットのセツナ・アオイさんですよね」
憧れであり、目標でもある人物。
今日生きた中で、一番緊張している。
「・・・そうだけど」
目を細めてジナを視るセツナ。
拒絶感が半端ない。もの凄いプレッシャーだ。
うう、逃げ出したい。
だけどここで挫けたらこの先、竜種と戦う時逃げ出してしまうかもしれない。
ここは、先輩の胸を借りるつもりで勇気を分けてもらうのだ。
「あ、あの!わ、わたしと握手してください!!!」
勢いよく頭を下げて手を差し出す。
周りが注目する。
セツナがキョトンとして、ジナと差し出された手を交互に視る。
永遠とも思える時間が流れる。
後ろでケイが固唾を飲んで見守る。
たくさんの視線が突き刺さる。
痛いっ!?そんな目で見ないで!!可哀そうなモノを視る眼差しで見つめないで!!!
わたしのライフはもう、ゼロよっ!!!!
嗚呼、なんでこんな事してるんだろう・・・。
恥ずかしいよ、涙が出てきそう。死んじゃいたい・・・。
・・・今ならアタシ、飛べるかもしれない・・・フフフ・・・。
すると、差し出した手に暖かい柔らかな温もりを感じた。
「!!!」
驚き、垂れた頭が跳ね上がる。
セツナがジナの差し出した手を握っていたのだ。
困惑した表情で、それでいてジナを気遣うように、そっと触れていた。
拒絶されると思っていた。
しかし、セツナは応じてくれた。
社交辞令かもしれない、こんな自分を哀れに思い、情けを掛けたかもしれない。
それでも、嬉しかった。
「あ、有り難う御座います・・・!!!」
涙が零れそうになる。
それを視てセツナは更に困った顔をする。
嗚呼、困らせてしまっている、御免なさい。
慌てて再び頭を降ろし、後ろに下がる。
「・・・ジナ、ナイスファイトだよ」
ケイが背中を擦り、労わる。
「・・・こ、怖かったよ、でも優しくて暖かい手だった・・・」
セツナと繋ぎ合わせた掌を見つめるジナ。
その後ろでジナに触発されたのか、たくさんの乗員たちが彼女たちに握手を求める行列が出来ていた。
ラウンジはちょっとした騒ぎになっている。
その対応に追われる三人のパイロット。
ジナは悪い事をしたかな、と少し後悔しながらも握手した手を胸に添えた。
ジナの心にかけがえのない光が差し込んだ気がした。