複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.111 )
日時: 2014/04/20 01:55
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: F1B4nr3O)


 ジナはいつもの様にコロニー都市の大図書館に通っていた。

 ここには世界から収集された旧世代の紙媒体の貴重な本の数々が納められている。

 一般にも公開されているので、利用する人は多い。

 ただ情報を検索するならデータベースを操作するだけで十分だが、趣があっていいとジナは思う。

 「えっと、この間は『乙女の咆哮は大海を割る』を借りたから、今日は続編の『乙女の左は世界を統べる』を借りようっと・・・」

 梯子に昇り、本棚から目当ての本を手に取ろうと、した時。

 バハムート艦の竜種接近警報が鳴り響く。

 市内が一気に緊張に包まれる。

 どうやら竜種の襲撃の様だ。

 
 制服のポケットから聞き慣れたメロディが鳴るとジナはそれを取り出し、画面をタップするとケイが携帯デバイスから通信を寄越す。

 「ジナ!中央セクターのモニターに映像が来てるよ!!」
 
 「うん!わかった、すぐ見に行くよ!!」

 ジナは梯子から飛び降り、大図書館を走り出る。















 コロニー市内中央セクターセントラルエリア。

 大画面のホログラムスクリーンには無数の竜種と壮絶な戦いを繰り広げる三機のドラグーンが映っており、それを大勢の市民が様々に見守っていた。

 固唾を飲む者、応援する者、傍観している者、気にせず歩み去る者、狂信的に崇拝する者、反応は人それぞれだ。

 彼ら一般市民にはパイロットの個人情報はその関係者を除き、一切秘匿され、明かされていない。

 故にどこか他人ごとのように感じている雰囲気がある。

 安心しているのか、それとも外の世界を現実とは認識していないのか。

 遠いここではないどこかの出来事。

 ジナはモニターを視ながらやるせない気持ちになる。

 叫びたかった。

 戦っているのだと。

 みんなを守るため。

 皆を居場所を守護するために。

 
 




 
 
 
 
 拳を握る手を緩め、胸に添え深呼吸をする。

 「・・・はあっ・・・。そんなことしても意味ないか。・・・アタシも候補生になるまで、自分には関係ないと思ってたし・・・」





  
 突然自宅に届いたメール。

 ドラグーンの適合試験を受けるかどうかの通達。

 両親はおおいに悦びの表情をしていた。

 幼い弟妹は不思議そうにしていた。

 アタシは学校で習った知識程度には知っていた。

 ドラグーンのパイロットに抜擢されるのは栄誉なことなのだと。

 最初は軽い気持ちで受けるつもりだったのが、いざ受けてみればあれよあれよと言う間に訓練学校に編入されていた。



 試験は合格。


 量産型ドラグーンの第三期候補生になっていた。