複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.115 )
日時: 2014/04/21 14:10
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 9Zr7Ikip)

 バハムート艦内通路。

 振り返るセツナ。

 感じる。

 胸を掻きたてる焦燥感。

 何か、何かが起きようとしている。

 とても嫌な何か、が・・・。






















 ヨルムガント管制室。

 突如鳴り響く警戒警報。

 「どうしたっ!竜種の襲撃か!!」

 ヴェロニカがブリッジルームに入室する。

 「か、艦長!当艦に凄まじいエネルギー反応値を持つ物体が急速接近しています!!け、計測値、振り切れています!!!」

 「原竜種か!?ドラグーン緊急出撃準備だ!!」

 ワイドモニターの索敵レーダーには、高出力の反応を示す異様な影が映し出されている。

 眼帯を押さえるヴェロニカ。

 疼く。

 蠢いている。

 己の中の忌まわしい邪竜の欠片が。

 「・・・まさか、『アレ』を狙っているのか・・・?だとしたら・・・」

 「全ドラグーン出撃準備確認完了!艦長!!発進許可を!!」

 オペレーターの報告に我に返るヴェロニカ。

 「・・・うむ、ドラグーン、出撃だ!!!!!」

 杞憂ならばいい。

 だが、そうでないならば・・・。























 ヨルムガントを発つ三機のドラグーン。

 荒涼とした砂海で、目標物を迎え討つべく飛翔する。

 「久々に戦い甲斐がある骨がありそうなヤツの気配がするな」

 フレースヴェルグからドミネアが楽しそうに言うが、眼は笑っていない。

 「・・・この反応は竜種、いえ、もっと別の次元に属するものと思われますが、ハッキリしているのは相当『ヤバイ』という事です」

 ヴィゾフィネルを駆るペルーシカが分析する。

 「凄く嫌な感じ。ゾワゾワする」

 ニドヘッグを操縦するセラフィナが警戒する。

 それぞれが、彼方まで広がる砂平線から迫ろうとする『何か』に鋭い視線を向ける。











 

 












 蜃気楼の遮光。

 身を焦がす熱砂の飛礫を巻き上げて、伸び上がる暗き影が差し込む。

 現世と幽玄の狭間が交錯する黄砂の世界。

 —————あたかもそれを体現するかのように、異形の産物が現実のただなかへと、その姿を現した。

 
 斜影に溶けゆく濃藍の巨躯。

 砂塵の海原を渡り、突き抜ける暗黒の暴風。

 蒼い空を染め上げる黒々とした翼は、虚無の嘆きに満ちる死者の墓標を嗅ぐわせる。


 あるいは、己の心臓に深々と突き立てられる断罪の大剣のように。




















 来る。

 闇が。





 無慈悲なまでの懺魂を抱いて。










 すべてを貪る暴虐の魔竜が。