複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.116 )
日時: 2014/04/21 19:45
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: vehLH22f)


 それは、死の澱み。

 一瞬にして、ドミネアたちの前に近づき、照り付ける砂漠ごと身体の芯まで凍えさせる様な冷気を発して現れ、佇む。

 巨体を構成する混ぜ捏ねた醜い複頭竜が幾つもの眼光を放ち、大きな顎口を獲物を噛み砕くのを心待ちにするように忙しなく歯噛みさせる。



 「・・・何なんだ、コイツは・・・」
 
 驚愕するドミネア。


 「・・・竜種?でも、これは、ドラグーン・・・?しかし、こんな機体はデータベースには・・・」

 ペルーシカが瞼を閉じたまま、顔をしかめる。


 「・・・普通じゃない。・・・在り得ない・・・」

 警戒心を全開にするセラフィナ。

 
 三機のドラグーンを前に巨躯の魔竜は大気を震撼させる巨大な咆哮を上げる。

 今これから、この時、この場所で、起きる事を予感させずにはいられない禍々しいさを感じさせた。


 ——————終わりの始まり。







 










 ヨルムガントのブリッジでもその悍ましい姿を確認された。

 一瞬の静寂の後、騒然となる管制室。

 すべての生物の本能に呼びかける、絶対的な感情。

 遥か古代から遺伝子に刻み込まれた逃れられない運命。

 ——————恐怖。


 「・・・まさか、そんな事が・・・。既に始まっていたというのか・・・!!!」

 ヴェロニカは立ち上がり、混乱するブリッジから退出し通路を駆ける。

 肉体に走る怖気を伴う疼きを抑え込みながら、格納庫に向かう。

 さらにその奥、何人も立ち入りが許可されない区画へと踏み入れる。
 
 巨大なエレベーターホールが軋みを上げ、最下層に降りる。

 何層もの分厚い隔壁を開け放ち、進む。

 暗闇に足を差し入れると、無数の照明が眩しく点灯される。

 「!!? なんとういことだ・・・!!!!」

 そこには巨大で歪な形状のドラグーンらしき機体が何重もの拘束板で固定され、保管されていた。

 だが、その機体の各所の肉の様な機械のような塊が生き物のごとく脈動し、蠢いていた。

 「・・・目覚めようとしている、のか・・・。ファブニル、お前の中のオリジナル『スヴァラ』が・・・」

 ヴェロニカは己の胸を、心臓の辺りを押さえる。

 「そして私の中の・・・」

 その時、凄まじい衝撃が艦を揺れ動かした。

 



















 
 ヨルムガントの側面に勢いよく叩きつけられたフレースヴェルグ。

 「ぐはぁあっ!!!!」

 艦体にめり込む機体に悠然と巨腕を振るう魔竜が迫り来る。

 「ドミネア!? くっ!!そのデカい図体封じさせてもらいます!!!グレイプルバインドティール!!!!」

 ペルーシカがヴィゾフィネルのロッドを可変形させ、刃が連なる長大な鞭を繰り出し、追撃しようとする魔竜に絡みつかせる。

 全身と四肢を強靱な連刃の長鞭が巨躯に幾重にも捲き付き、機体をそのまま微塵に破壊するかごとく締め上げる。

 「今ですっ!!セラフィナ!!!」

 動きを止められ拘束された魔竜の頭上に飛び上がるドラグーンの影。

 巨大なドリルハンマーをかかげるニドヘッグ。

 「対象を完全破壊する。ミッドガルグランブレイク!!!!」

 ブースターが噴射し、加速された超速回転するドリルの鎚が打ち砕き、圧壊させるべく魔竜に繰り出される。

 さらにその寸前、体勢を整えたフレースヴェルグが現れ魔竜に肉迫する。

 「よくもやってくれたなっ!お返しだ!!喰らえ!!!二ーヴェル・エターナルヴァレスティ!!!!」

 渾身の力を込め、構えたレイピアからすべてを貫き穿つ無尽無双の連続突きを放つドミネア。

 三機のドラグーンの連携攻撃がひとつとなり、暴虐の巨竜に直撃する。

 
 そして衝撃が迸り、爆煙と砂塵が一面を覆い隠した。