複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.121 )
日時: 2014/04/23 17:23
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: O35iT4Hf)


 アリーザの宣言と同時に襲い来る魔竜、ティアマト・アルヴァΩ。

 巨腕の剛爪をかなぐり振るい、ファブニルの猛爪と衝突し組み合う。

 「くっ! 何て力だ・・・! 聞こえているか、パイロットの者よ!! やめるのだ、このような暴挙は何も意味はなさない!! 世界が本当に滅びるぞ!!!」

 互いの巨腕を軋ませ、ギリギリと押し引き合う二体の巨大かつ歪なドラグーン。

 ヴェロニカは眼前の魔竜を駆る者に訴える。

 「・・・滅ぶ?違うぞ、生まれ変わるのダ。世界は真に救われる時が来たのダ。そのためには、別たれた『器』が必要なのダ、ソウ、其レガ星ノ意志。・・・呼ビカケル原初ノ囁キ・・・」

 蛇眼の瞳孔をギョロリと拡大させるミカエラ。

 既にそれは人ではない。

 「・・・うぅっ!!? ここまで取り込まれてしまったのか!!! アリーザ、お前は何という事を・・・!!! 自分が何をしているのか分かっているのか!!! 未来ある若者の明日を奪うなど・・・!!!」


 アリーザはさも、つまらなそうに、一別する。

 「言ったでしょう、犠牲はいとわないと。それにその娘が望んだ事なのよ、力の渇望を。私は少し、手伝っただけ・・・」

 ティアマトが咆哮を上げると、急速に周囲の力場干渉値が跳ね上がり、著しく上昇する。

 黒い澱みが揺らぎ、負のエネルギーが一点に集中していく。

 「皆を巻き込むつもりか!!? やらせはせんっ!!!」

 ファブニルが頭部を反らし、強烈なヘッドバットを喰らわせる。

 二体の顔部が直撃し、その勢いのまま体当たりを仕掛けるファブニル。

 織り重なる様に吹き飛ぶ二機の超竜。

 だが、それでもティアマトの力場集束は止まらない。

 巨大な腹口部が大きく顎を開き、汚泥のごとき濁流が流れ込み、暗黒球を形成する。

 「くっ!! すまん、ファブニル!!! 少しの間、辛抱してくれ!!!!」

 ヴェロニカは激しく振動するコックピットで、操縦桿を強く握る。


 ファブニルが豪腕を大きく振りかざし、魔竜の腹腔口内に烈震の一撃を叩き込んだ。

 








 迸る漆黒の閃光。



 








 二機の超竜を起点に闇の帳が暗幕を降ろす。













 砂漠を覆う衝撃波。























 「コントロール不能!! この場は危険です!! すぐに退避するべきです!!」
 
 ヘリは迫る衝撃の余波で操縦不能に陥っていた。

 「チッ!! 仕方ないわ、急速離脱!! この場から退避する!!」

 アリーザを乗せたヘリはその場から離れていった。





 
 その後を荒れ狂う砂嵐が巻き起こり、突き抜けていく。



 














 吹き荒ぶ砂塵が過ぎ去り、暴風が止む。



 暗澹とした暗闇が拭われ、姿を現す二匹の超竜。








 両腕と腹腔より下半身部が融解し、消え去ったティアマト。

 右肩腕部から上半外装、前肢部分がおおきく削り取られ、消失したファブニル。



 互いが嘶き、咆哮を上げる。

 双方、瞬時に失われた欠損箇所を復元する。

 だが、気力全開のティアマトに対し、ファブニルは復元途中で瓦解してしまう。

 断末魔の悲鳴とも嘆きともつかない呻きを上げ、ボロボロとひび割れ、形が崩れていく。

 そこにティアマトが激突し、殴る。

 砕かれ、千切れ飛ぶ機片、崩壊する機体、更に拳が打ち込まれ、破壊される。

 



 「・・・やめ、ろ・・・もう、や、めて、く、れ・・・」

 砂海に埋もれるユグドラシルからその有り様を見せつけられていたドミネアは涙を流し、弱々しく懇願する。








 ティアマトが大きく機体を仰け反らせ、ひと際巨大な雄叫びを放つ。








 太く禍々しい狂爪がファブニルの胸部を貫いた。