複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.123 )
- 日時: 2014/04/24 01:56
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: P4ybYhOB)
武器を構え、対峙する九体のドラグーン 。
ティアマトは咆哮を上げ、身構える。
「ミカエラ、もういいわ。目的は十分果たしたから。これ以上カードを切る必要はないわ。ファブニルの機体を回収して撤退しなさい」
アリーザは臨戦態勢の猛る魔竜を諌め、なだめる。
ティアマトは言うとおり、ファブニルの残骸を無造作に掴むと、周りの竜機を威嚇しながら、背中の黒蛇を巨翼に変え羽ばたかせる。
「待つのじゃ、アリーザ。このままお前たちを帰すと思うか?」
シャオがヴァリトラで前に進み出る。
鮮血に塗れたヴェロニカがヨルムガントに運び込まれているのを横目で視て、アリーザに視線を移す。
「・・・変わったのう、お主。・・・やはり許せぬか、儂らを。いや、世界のすべてを・・・」
「・・・許す? 許すも許さないも、偽善ごっこは貴方たちが得意でしょ、メイメイ? ・・・もう茶番はたくさんなのよ・・・」
冷たく言い放つアリーザ。
そこに上空から巨大な船影が覆う。
バハムートが飛翔し、巨大な砲門を向けている。
「・・・茶番は今のお前がしていることだろう、アリーザ」
ブリッジからミヅキが苦悶の顔をして話す。
「・・・ミヅキ」
アリーザがヘリから上空の戦艦を仰ぎ見る。
「そうよ〜、かつての仲間同士が争うなんて、悲しすぎるわ〜」
砂丘を乗り越え、シェンロンが砲門を並べている。
エウロペアがブリッジで悲しそうにしている。
「・・・アイシャ」
シェンロンを見下ろすアリーザ。
「・・・アリーザよ、儂らを許せとは言わん。だが、お主のしていることは取り返しがつかぬことじゃぞ? ・・・それは、本当にお主が望んでいることなのか? 本当に許せないのはロゼを助けられず失ってしまったお主自身ではないのか・・・?」
シャオは静かに問う。
「・・・帰艦するわ、ミカエラ」
数瞬、間を置き、アリーザは言う。
「待てっ!!帰すわけには・・・!!!」
その時、遠方から超速で複数のドラグーンの機影が迫る。
瞬時に、アリーザたちを守る様に立ちはだかるドラグーンたち。
リンドブルム、ラハブ、ビヒモス、ケツァルカトル、ユルング。
「・・・」
無言で佇むリヴァイアサンのドラグーン。
「力づく、と言うならどうぞ。相手するわ。ただし、艦体に相当の被害が出ると思うわ・・・」
アリーザは眼を細め、冷たく言い放つ。
「・・・行くがいい。この場は見逃してやろう」
シャオはアリーザが本気の眼をしていることに気付き、促した。
今このまま戦えば、パイロット、艦の人間とも、凄まじい死者が双方に出ていたろう。
「・・・そう、ありがとう。・・・それとメイメイ、あなたのオリジナル『ガウロウ』必ず頂くわ。そして、黒いドラグーンの貴方、貴方の『アルクラ』も、ね・・・」
「・・・取れるものならな」
シャオは仁王立ちで答える。
「・・・エキドナに関わる者に渡す訳にはいかない」
シズクは静かに答える。
アリーザを乗せたヘリはそのまま飛び立って行った。
残りのドラグーンも後を追い、飛び去る。
しかしティアマトだけが残り、ワイバーンと双見している。
「・・・セツナ・アオイ。お前だけは必ず、この手で・・・」
不気味に呟くと、ファブニルの残骸をぶら下げ飛翔して行った。
「・・・ミカエラ」
セツナはかつて対峙した少女のあまりの邪悪な気配に言葉が詰まった。
後には無尽の砂の海と後味の悪さだけが苦々しく残っていた。