複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.13 )
日時: 2014/03/25 14:15
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: /f6cMoTi)

 
 食堂での一通りの騒動が収まり、喧騒が戻るとセツナは疲れた様子で溜息を吐いた。

 「相変わらず後輩に人気がありますわね、ミス・セツナ。普段はこんなにも無愛想なのに。何か秘訣があるのかしら?」

 エリーゼルが感心したように言う。

 「エースパイロットだからね、セツナっちは。ミステリアスさとクールな所に惹かれるんじゃないかな?そういうエリっちもたくさんの子に握手されてたでしょ?」

 マリアが分かった風に頷き返す。

 「それを言うならば貴女もでしょう、ミス・マリア。まあ、どちらかと言うとヌイグルミ扱いでしたが」

 エリーゼルとマリアも握手を求められた。エリーゼルには礼儀正しく接し、マリアは揉みくちゃにされて可愛がられていた。

 「う〜ん、それは否定できない・・・。二人に対して、この扱いの差は何だろう?改善を要求する!!・・・てりゃっ!いただき♪」

 そう言ってマリアがエリーゼルの皿から料理をフォークで刺し、奪い取る。

 「な!?わたくしのロールキャベツ!!何という事をなさるのですか!!?」

 「ふふふ、世の中、非情なのですよ?常に戦いに晒されているのです、エリーゼル女史」

 悪い顔で奪った獲物を口に運ぶマリア。

 「・・・そうですわね。貴女の言う通り油断したら即、命取りですわ。隙あり!!!」

 エリーゼルが素早くマリアの皿から料理を奪い、食べる。

 「ああ〜っ!?あたしのエビフライっ!!!最後に食べようと残しておいたのに〜!!!」

 地団駄を踏んで悔しがるマリア。そして二人の料理の奪い合いが始まる。

 セツナは、そんな騒がしくも楽しげな二人を見て、幼い頃姉と一緒に食事していた事を思い出していた。

 記憶の中の姉はボンヤリとしていたが優しく、太陽の様に輝いていた事を幼いながらにも想った。

 姉妹仲睦まじく過ごした日々を蘇えらせ、目の前の二人に重ね合わせたセツナは自然と笑みが零れた。

 「「!?」」

 不毛な争いを続けていたマリアとエリーゼルは、セツナの柔らかい微笑みを見て、硬直した。

 「・・・なに?」

 二人が凝視している事に気付き、いつもの仏頂面に戻ったセツナはさっさと食事を再開した。

 静かに姿勢を正して席に着いたマリアとエリーゼルはその顔を真っ赤にしていた。

 「・・・食事、終わったからもう行くわ」

 セツナは短く言うとトレイを持ってカウンターの奥に去って行った。

 彼女が去った後、二人は互いに顔を見合わせて呟いた。

 「あー、何でセツナっちが人気があるのか解った気がする・・・」

 マリアが椅子にもたれて言う。

 「不覚にも撃墜させられてしまいましたわ・・・」

 エリーゼルが深呼吸している。

 そして二人はすっかり冷めてしまった料理を急いで食べだした。