複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.131 )
- 日時: 2014/04/27 14:10
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: rD6rLP90)
南太平洋火山諸島。
そこは以前セツナたちが戦った場所でもある。
その巨島が大きく揺れ動き、海原を割り、波しぶきを散らして浮上する。
諸島は巨大な地繋ぎの、ひとつの島となって全貌を現した。
噴煙を立ち昇らせる一際目を引く火山の一角、その内部。
マグマが噴き上げ、灼熱の熱気が満ちる空洞が広がる。
がらんどうな空間は、どこか神秘的な雰囲気を醸し出しながら悠久の時を感じさせる。
その中心部、溶焔の間欠泉がボコボコと煮立ち、すべてを溶かしてしまいそうな黄泉の世界を幻想させる場所にそれは在った。
繭。
静かに目覚めの刻を心待つ胡蝶の夢。
魔卵。
世界を喰らう日を渇望する龍蛇の堕とし児。
「・・・揃ったオリジナルは、十一体・・・。『アスディーグ』『キュノプロソビ』『サファト』『ロタン』『シルシュ』『ズメイ』『スヴァラ』『スキタリス』『エンディアタ』『エピロテス』『イアキュルス』・・・。あとの二体、シャオ・メイメイのヴァリトラが持つ『ガウロウ』、シズク・アオイのワイアームに宿る『アルクラ』が揃えば、誕生する・・・」
アリーザは熱風が吹き荒れる火山洞窟内部の大きく開けた空間に鎮座する巨大な肉塊を鈍鉄色のドラグーン、ジズのコックピットから見つめていた。
繭とも卵とも言い難い醜惨極まる肉の巨塊に包まるティアマト・アルヴァΩ。
ビクッビクッと血管を浮立たせ脈打ち、マグマの激高温の排熱を物ともせず、揺り籠のように羊膜に抱かれている。
母の御胎で眠る暗黒の胎児。
幽幻の海にその躰を浸かる混沌の堕竜。
「・・・仮に揃わなくても、問題ないわ。十分、『世界の意志』を書き換えられる」
アリーザはそこで、ふと、考えた。
気になる者がいた。
あの、蒼いドラグーン。
そして、そのパイロットの少女。
確か、シズク・アオイの近親者。
名はセツナ。
かつて頓挫したエキドナが関わったあのプロジェクト。
超越なるものを創造する計画。
それはシズクの暴走と脱走によって失敗したが、研究途中の過程で誕生した蒼躯の竜機。
ワイバーン、だったか・・・。
あれには、それ程の能力は無かった筈だが・・・。
あきらかに突出していた力だった。
オリジナルは組み込まれていない。
なのに、ミカエラのティアマトと渡り合った。
何者なのか。
「・・・まあ、いいわ。どちらにしても、もうすぐ世界は生まれ変わるのだから・・・」
もう後戻りはできない。
とうに覚悟は出来ている。
すべてが色褪せたあの日から。