複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.132 )
日時: 2014/04/28 18:21
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 2rVK2fl9)

 砂漠での激戦から数日後、世界規模の壮絶な地震が各地で起こった。

 まるで、地球が身震いするかのごとく。

 それと同時に竜種細胞を宿す、すべての者、ドラグーンを駆る者に危機感を憶えさせた。





 胎動している。


 とてつもなく巨大で禍々しい『何か』が。








 整備員と共に己のドラグーン、ヒュドラのメンテナンスを施していたマリアは、巨大地震が収まると、突如、金色の瞳に切り替わり、各々のパイロットたちにテレパシーを送る。


 
 『・・・皆さん、突然の交信ごめんなさい。ですが、緊急を要するのでお知らせします。至急、ヨルムガントのブリーフィングルームにお集まりください。・・・先程の地震について、皆さんも感じた筈です。それについて、どうしてもお話しなければならない事があります・・・』



 そして、瞳が元の彩色に戻り、一緒にいた整備員と驚く。


 「・・・イリア!? どうして突然・・・。うん、わかった。みんな集合だね!!」

 マリアは胸に手を添え頷くと、格納庫から走って行った。

















 意識に直接語りかける少女の声。

 皆、一様に驚いたものの、大砂海の一件で、それぞれ思う所があった者たちは、ヨルムガントの作戦会議室に集合していた。




 セツナ、エリーゼル、ドミネア、ペルーシカ、セラフィナ、シャオ、フェン、ルウミン。

 そして、それぞれの艦体の艦長が顔を合わせる。

 バハムートからミヅキ、シェンロンからエウロペアが。

 ヴェロニカだけはまだ安静を要するため、病室からのモニター越しであった。 


 マリアが皆の前に立ち話す。

 「・・・えっと、みんなに話があるって、あたしの妹のイリアが・・・。あっ、イリアは私の中にいるもうひとりのあたしで・・・」

 しどろもどろに説明するマリアの瞳が金色の光を帯び、落ち着いた雰囲気に変わる。

 「・・・皆さん、急にお呼び立てして申し訳ありません。私がイリアです。ですが、直接お話ししなければと思いましてこのような形を取りました・・・」

 突然別人格に変質したマリアに事情の知らぬ者は驚く。

 シャオは眉を上げ、イリアと名乗るマリアの身体に憑依する者に尋ねる。

 「ふむ、ひとつの身体にふたつの精神か。魂魄レベルで癒着しておるのう。お主が何者かは後にするとして・・・。して、イリアとやら、お主の話と言うのは、先程の天変地異で感じた不穏な気配についてじゃな・・・?」

 新調した成人サイズのパイロットスーツを着こなし、腕を組むシャオ。

 「はい。皆さんも無意識だとしても感じ取ったはずです。巨大な闇の鼓動を・・・。あれは『世界の意志』に成り変わろうとする者の力の波動です。余波であれだけの影響があるのであれば、目覚めれば世界が、星が未曾有の危機に見舞われるでしょう・・・」

 イリアが淡々と語る。

 「ちょ、ちょっと待てよ! 全然話が視えてこないんだけど・・・!!」

 ドミネアが包帯で覆った頭を抱える。

 モニター越しのヴェロニカが話す。

 「・・・それは、もしやあの時戦った巨大なドラグーンの事ではないか? アリーザがオリジナルを欲していた理由がそこにあるのならば合点がいく。・・・シャオ先生、あの時と経緯は違えど同じではありませんか?エキドナが成そうとしていた事と・・・」

 「・・・ううむ、アリーザか。・・・ロゼが命を賭して守った世界を引っ繰り返そうなどとは思えなんだが・・・」

 シャオは眼を閉じる。

 そこにペルーシカが話に割って入る。

 「・・・ロゼ、と言う人は、もしや初期ドラグーンパイロットの立役者で竜種激戦の影の英雄、ロゼ・カミューアではないのですか?・・・データベースにはそれ以上の事は記載されていませんでしたが・・・」

 ペルーシカの言葉にシャオ、ミヅキ、ヴェロニカ、エウロペアが苦い顔をする。



 「・・・影の英雄か。言い得て妙じゃのう・・・」



 シャオは溜息を吐き、静かに語りだした。