複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.134 )
日時: 2014/04/29 02:10
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: OI3XxW7f)



 成層圏を覆う白い十三枚の光輪の羽根。









 その中心に紅緋色のドラグーンが浮かぶ。








 目覚めさせてはならなかった。

 惹き合わせてはならなかった。

 これは、人類が触れてはならないモノだった。

 仕組まれていたのだ。

 巧妙な罠が。

 太古より人の遺伝子に黎明と組み込まれたプログラムが。

 虎視眈々と狙い澄ましていたのだ。

















 「ロゼ先輩っ!!!!!!!!」

 「いかんっ!! お主も捲き込まれてしまうぞ、アリーザ!!!」

 純鉄色のドラグーン、ジズで奔流の中心に飛び込もうとするアリーザを押さえるドラグーン、ヴァリトラを駆るシャオ。


 「このままじゃ、ロゼちゃんが〜!!!!!」

 「くっ! 私のドラグ・バーラーに覚醒したファブニルなら、短時間だが耐えられるはずだ!!!」

 藤色のドラグーン、ヴァスキを操縦する焦るエウロペアの隣から超速で光の濁流の中心点に飛び込むヴェロニカのドラグーン。





 機体をバラバラに引き千切らんとばかりの容赦ない衝撃が際限なく襲い来る。




 「ロゼ!!! 手を伸ばせ!!!! これ以上は反作用で接近できない!!!!!」

 ファブニルの腕を伸ばすヴェロニカ。

 紅緋のドラグーン、サラマンドラを掴もうとする。

 
 「・・・ヴェロニカ。あの子を、アリーザを頼む・・・」

 乱気流の渦がサラマンドラの機体を見る見るうちに解体していく。

 「何を言ってる!!! 皆で帰ると約束しただろう!!!!」

 もう少しで腕が掴めそうだが、ファブニルの機体も悲鳴を上げ装甲が剥がされていく。


 「・・・『これ』は目覚めさせては駄目だ。・・・サラマンドラのメルトニウムを暴走させれば一時期に休眠状態にさせることが出来る・・・」

 落ち着いた口調で静かに話すロゼ。

 「なっ!!? 何を言っている!!! 死ぬ気か!!! 駄目だ、絶対にそんな事はさせない!!! 必ず連れ帰る!!!! 生きて帰って対策を練るんだ!!!!」

 ヴェロニカが強く言い放つ。

 「・・・相変わらずだな、お前は。・・・だが、そんな時間はない。『これ』が完全に覚醒すれば、世界が、星が終わる。・・・それだけは阻止する・・・」

 互いのドラグーンは、いまにも崩壊寸前だ。

 「諦めるな!!! 他にも方法があるはずだ!!! 一緒に探そう!!! いままでも私たちはそうしてきただろう!!?」

 その時、ファブニルの伸ばした手がサラマンドラの腕を掴んだ。

 「良しっ!!!! このまま全力で離脱・・・!!!!!」

 










 サラマンドラの腕が千切れ、分断された。


















 渦巻く破壊の暴流に飲み込まれる紅緋の機体。


















 ドラグーン越しに視えた。


















 微笑んでいた。



















 穏やかに。


















 そして次の瞬間—————————。

















 白一色に染まる世界。
















 「ロゼェェェエエエエエエエェェェエエエエ!!!!!!!!!」
















 星を覆う閃光が奔った。