複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.136 )
日時: 2014/04/29 23:02
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: lqhOUyMm)


 独房懲罰室。

 狭く、薄暗い部屋の中、拘束マスクと拘束服で雁字搦めにされた少女アリーザ。

 目は虚ろで、光は無く、焦点が合っていない。


 ドラグーンで暴れ、艦体の一部と近隣都市を破壊し、大きな被害を出した。

 止む無く、他のドラグーンが撃破し、捕縛したのだ。















 数十時間前。





 黒煙が昇る軍艦アナンタの主砲台にアリーザのドラグーン、ジズが仁王立ち、艦体を蹴り抜き、破壊する。


 「やめろっ! アリーザ!! ドラグーンを降りるんだ!!!」

 ヴェロニカがファブニルで止めに入る。


 「・・・アリーザ・・・。こんな事をして何になる・・・? 落ち着くのだ」

 シャオが隙を窺いながら言い、ヴァリトラを近づける。


 「アリーザちゃん・・・。もうやめよう、戻ろう?」

 エウロペアがヴァスキで背後から迫る。

 
 アリーザを包囲する三機のドラグーン。


 「・・・なんで・・・何で、先輩を助けなかったの・・・? 何で、ロゼ先輩を、見捨てたの・・・? なんで、なんで、なんでなんでなんんでっ!!! なんでっ!!!! なんでっ!!!!!」

 ジズの外装が展開し、幾つものエアッドブラスターが射出可能状態に入る。


 「!!! いかん!! 一斉放射するつもりじゃ!!! 艦体が消し飛ぶぞ!!!!」


 「アリーザ!!!!!」


 「アリーザちゃん!!!!!」


 エネルギーを機体全身に集中させるアリーザのドラグーンにフェブニルとヴァスキが左右から瞬時に組み付く。


 「うぁぁああああああぁぁああぁあああっっっ!!!!!!!」


 急速に出力を上昇させるジズ。


 「・・・すまん、アリーザ!! 少し大人しくさせてもらうぞ!!! 機功破芯掌!!!!」

 ヴァリトラがゆるりと構えを取ると、超高速でジズの胸部、コックピットに狙いを定め、掌底を叩き込む。


 「がはぁああっっっ!!?」

 
 衝撃が機体全体を駆け抜け、内部のアリーザにもダメージを与え、その意識を刈り取った。

 
 動きが鈍り、項垂れ、稼働を停止するアリーザのドラグーン。

 両脇から支えるヴェロニカとエウロペア。

 ふたりとも悲痛の表情をする。

 シャオも複雑な顔をする。



 失ってしまった仲間。



 叫びたいのは皆、同じだった・・・。























 拘束され、監禁されたアリーザ。

 先程まで叫び罵り、喚き散らしていたが、強力な鎮静剤と弛緩剤を投与され死んだように大人しくなったが、回復すればまた破壊活動を繰り返すことは明白であった。


 このことはすぐに上層部に知れ、最速の処断が上から下された。

 心神喪失及び精神的疾患によるドラグーンの適正搭乗資格の剥奪。

 身柄を引き渡し、更生施設に隔離すると言う非常に重いものだった。



 これにはシャオたちも驚いた。

 確かに彼女がしたことは許されない事だ。

 死傷者も出たのだ。

 だが、これはやりすぎでは・・・?

 大切な友を失ったのだ。

 自暴自棄にもなる。

 情状酌量の余地もあるだろう。

 なのに、これはどういうことか。

 何か作為的なものを感じたが、自分たちはいちパイロット、止める権限は無い。

 アリーザが搬送される施設はある企業が資金提供をし、管理している。








 エキドナ。








 すべての基盤を創り上げた巨大組織。



 そして、すべての鍵をその手に握る強大な存在。