複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.137 )
- 日時: 2014/04/30 13:23
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 1j9Ea2l5)
「・・・それから間もなくアリーザは更迭され、儂たちの前から姿を消した・・・。その時、ドラグーンも一緒に運び出されたのじゃ」
シャオは淡々と語る。
「憶えている・・・。輸送船から最後まで私たちを視ていたことを。虚ろな瞳で・・・。私は、彼女からあの子を託されていたのに・・・、何もしてやれなかった・・・」
ベッドのヴェロニカが悔やむように話す。
「後で、私たちが面会しようとしたんだけど〜、一切許可は下りなかったの〜。さすがにおかしいと思って調べたんだけど、そんな更生施設は存在していなかったのよね〜。・・・表向きには、ね・・・」
エウロペアが顎に手を指を添え、話す。
「当時、エキドナが管理している施設群は世界中に無数にあった。その全部を調べるなど不可能だった。・・・それから、二年後・・・」
ミヅキが喋り、間を置く。
「・・・アリーザが私たちの前に姿を現した。パイロットとしてではなく、技術者として・・・」
技術開発局部の最高責任者としてアリーザは戻ってきた。
少女の外観から冷徹な面差しが放たれ、あの時の幼さをすべて消し去っていた。
部署は違えど、自分たちの上司に当たる。
おいそれとは逢えなかった。
仮に逢ったとしても、会話は一切無く、拒絶にも等しく門前払いで、あしらわれた。
その氷の瞳には、何も映していなかった。
自分たちの姿など、はなから存在していないように・・・。
もともと学者肌であったことは、メンバー全員が知っていた。
戦いより、情報戦のほうが得意だったから。
ドラグーンの強化、新技術を立ち上げ、戦力の増強を推進した。
しばらくした後、この功績によるものなのか特進階級を受け、軍船アナンタから再び、姿を消した。
後の噂で、最年少で艦督職に就いたと耳にしたのだ。
皆、黙して静かに話を聞いていた。
ヴェロニカたちの過去にそんな事があったとは・・・。
そして、エキドナの存在。
同じく静かに聞いていたイリアが話し出す。
「・・・当時、皆さんたちが遭遇したという、未知の存在。それは、古来よりこの星に存在する、いいえ、正確には『巣食う』、と言ったほうがいいでしょう。・・・竜種の原型であり、しかしこの星に生命をもたらした母なるものとは異なる次元にあるもの・・・」
シャオが訝しげに見る。
「・・・エキドナが最初に『原初の竜』を発掘したのが発端ではないのか? 儂もずっと疑問に思っておうたのじゃ。そもそも奴らは何なのじゃ? 明らかに儂らと意趣を反する存在じゃぞ。」
イリアは困った様に言う。
「・・・残念ながら、私もその答えを持ち合わせていません。私の言葉も私に流れ込む『意志』を代弁しているにすぎないのです。彼等を言語で明記することはほぼ不可能であり、高次元、の、事象、で・・・ううっ・・・」
イリアが苦しそうに、呻きだす。
「むっ!? どうした!?」
「・・・もう、時間、が・・・あり、ま・・・せ、ん。・・・星の・・・命が・・・侵食・・・目覚め・・・止め、なけ・・・れば・・・」
そのままシャオの腕に寄り掛かり、意識を失ってしまった。
それと時を同じくして、再び巨大な地殻変動に見舞われた。