複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.139 )
日時: 2014/05/01 20:56
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: nWdgpISF)

 巨大火山島空洞内。

 噴き上げるマグマの湖面に無数の肉の根を張り巡らせ、不気味な鼓動の鐘を打ち鳴らす醜悪な肉の巨塊。

 その様子をドラグーン越しに黙して見つめるアリーザ。

 その背後に三機の竜機の影が差す。

 「・・・そろそろ来るだろうと思ってたわ。シズク・アオイ。それとリーシェ・カーム、リーファ・カームの姉妹・・・」

 振り返るアリーザのドラグーン、ジズ。

 その前に姿を現した竜機たち。

 漆黒のドラグーン、ワイアーム。

 赤銅のドラグーン、ダハーカ。

 青白のドラグーン、ザハーク。

 「・・・アリーザ。大人しく投降しろ、命までは奪わない。この馬鹿げた人形劇に幕を降ろすんだ」

 ワイアームに搭乗するシズクが威圧を込め、言い放つ。

 「フッ、何を言い出すかと思えば、くだらないことを・・・。本当の目的を言えばいいわ、『復讐』に来た、と」

 場の緊張感が高まる。

 「・・・やはり・・・。あのプロジェクトに関わり合いが・・・」

 「そうね、立案したのは私だから。実行に移したのはエキドナの科学者連中だけど・・・。貴方たちが妨害して実験機を持ち出さなければ、わざわざオリジナルを探さないで済んだかもしれないのに・・・。余計な手間を掛けさせてくれたわ」

 アリーザはワザとらしく溜息を吐くと、背後のリーシェたちは怒りを露わにする。

 「お前たちが! お前たちが非道な実験を行っているのを知ったからだ!!」

 「どれだけの子供たちが犠牲になったと思っているんだ・・・!!!」

 ダハーカを駆るリーシェがジズを指差し、激昂するリーファがザハークの拳を握りしめる。

 「あぁ、そういえば。貴方たちから得たデータで造られた実験機が一体あったわね。あの蒼いの。それの適合者がシズク、貴方の妹だなんて、皮肉じゃない? 姉妹揃って良い様にモルモットにされて・・・ふふふ」

 笑うアリーザ。

 それに反応したのはシズクの後ろに控えていたリーシェたちだった。

 「き、貴様っ!!!」

 「許さないっ!!!」

 今にも飛び掛からんばかりのふたりを手をかざし、止めるシズクのワイアーム。

 「・・・見え透いた時間稼ぎだ。アリーザ、お前の野望は叶わない。何故なら今ここで、私たちが潰すからだ、そこの醜い蛇の卵ごと・・・」

 ワイアームが両腕から黒の双剣を展開する。

 「ふん、世迷言を。オリジナルをわざわざ自分から運んできて、此方から探す手間が省けたわ・・・。相手してあげなさい、お前たち!!!!」

 アリーザの言葉に何処からともなく、その姿を現した複数のリヴァイアサンのドラグーン。

 ケツァルカトル、ユルング、リンドブルム、ラハブ、ビヒモス。

 「・・・」

 パイロットたちの反応は無い。

 皆一様に虚ろな表情で瞳には何も映さない。

 「・・・これは・・・。この者たちに何をした・・・?」

 シズクが油断なくワイアームの双剣を構え、アリーザに問う。

 「何か色々聞いてきて、一々うるさいから、ついでにみんな頭の中をちょっと弄ってやったのよ。そしたら非常に大人しく良い子になったわ」

 アリーザがにべもなく茶化して言う。

 「・・・なんて、愚かな、外道な真似を・・・」


 睨み合う竜機。


 「『器』が目覚めるまで時間はあるわ・・・。さあ、たっぷり遊んであげなさい!!!」


 
 アリーザの合図と共に、複数のドラグーンが躍り掛かったて来た。