複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.14 )
- 日時: 2014/03/25 20:17
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: VnmAEQod)
自室に戻ったセツナはベッドに腰掛けた。
何もない空虚な部屋。必要最低限の物しか置かれていない。照明は点けず、部屋を照らすのは小さな強化繊維板の透明な窓から射す日の光だけだ。
ベッドの脇にある小さな写真立てを取り、見つめる。
写真には幼い少女の肩に手を置き、微笑む年上の女性が映っていた。
「・・・姉さん」
セツナはボソリと呟く。覚えている。
あの日、唐突に知らされた姉の死。
任務に出掛けたきり何日も帰って来なかった。そんな事は今までにもあった。姉はドラグーンのエースパイロットだから、とても優秀だから、皆、姉を頼るのだろうと。
幼いながらも仕方ないと思い、同時にそんな姉が誇らしかった。いつもひとりで姉の帰りを待っていた。不安と恐怖で心細かった。
このまま姉が帰って来なかったら?
そんな事を考えてしまい、泣きそうになると決まってあの、暖かい、優しい声が聞こえるのだ。
ただいま、セツナ、と。
だから、その日も任務が長引いているのだろうと思い、ひとりお気に入りのオモチャを抱いて待っていた。そしていつもの通り、玄関が開いた事に悦び出迎えようと駆け出した。
だが、そこにいたのは知らない大勢の大人だった。
そしてその大人たちから告げられた。
——————姉の死を。
それからの日常は目まぐるしく変化した。姉の遺品はすべて持ち去られ、自分は養護施設に入れられた。
周りには自分と同じ家族を亡くした子供が大勢いた。その子たちは自分たちを慰め合い、共に生きようと励まし合っていた。
どうでもよかった。
なにもかも。
施設で過ごす日々は、しごく単純で変わり映えしなかった。
ある日、自分を引き取りたいと言う女性が現れた。姉の所属していた団体の関係者で直轄の上司だと言う。
この女性が現在の艦長であるミヅキ・タチバナであり、自分たちの上司でもある。今はこの人に恩を感じ感謝しているが当時幼かった自分には憎い大人のひとりでしかなかった。
何故姉を助けられなかったのか、何故、危険な任務に就かせたのか、そう思わずにはいられなかったが、この女性を責めても姉はもう戻って来ない。そのままセツナは引き取られ、女性と暮らす様になったが、心を閉ざし、何も感情を示さなかった。
数週間程経過した日、セツナの元に団体からの通達があった。ドラグーンの搭乗者としての適合試験の受諾の有無を。
セツナはこの誘いを了承した。