複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.144 )
日時: 2014/05/11 17:17
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: UcSW/zmZ)

 地平線から伸びる陽光。

 新しい一日を知らせる眩しい日差しが夜の闇を暴き、照らし出す。

 夜明けだ。

 まだ薄暗い広大な海域に緩やかに影を切り取り、巨大な艦隊群をありありと映えさせる。


 大空をバハムート、海上から、シェンロンが進軍する。

 ヨルムガントは損傷が著しく、尚且つ艦長とドラグーンパイロットが負傷しているので参戦は出来ない。

 戦力は少ないがそれでも往かねばなるまい。

 目指すは太平洋中心部。

 そこに目標となるべきものがある。

















 視えてきた。























 混沌をもたらす負の象徴。


 それは総毛立つような不安を掻きたてる。

 
 どこまでも黒く塗り込めた無限の暗闇を脳裏に刻み込ませる禍々しい蛇腹。


 死の神を連想させる十とふたつの悍ましい頭蓋。


 これが、人の手によりもたらされたものだとしたら、それは神域を侵し汚す蛮行なのではないかと思わせてならない。

 直感で感じるのだ。

 あれは放っておいてはならないと告げる。

 放置しておけば、あの邪龍は人の世界に大いなる厄災を招くのだと。

 その危険な存在の発端を創り上げてしまった。

 決着は自分たちの手でつけねばならない。

 あの巨大な竜とそれを操躯する者を。

 ドラグーンを駆るものとして。


























 「・・・来たわね、雁首揃えて。これで役者はすべて揃った訳かしら・・・」

 ドラグーン、ジズのコックピットでアリーザは仰ぎ見る。

 空、海に巨大戦艦が二隻、全砲門を開き備える。

 そして、此方に飛翔する竜機たちの機影。
 
 ワイバーンD.R、ペンドラゴン、ヒュドラ。

 ヴァリトラ、ショクイン、ペクヨン。

 艦体を守る様に汎用ドラグーンが何十機と。


 







 シャオが駆るヴァリトラが旋空し、ジズに剣を突き付ける。

 「アリーザよ、お主に問おう。もう儂らは互いに退くことは出来ないのか?。最後にそれを確認したい」

 「・・・シャオ先生、いや、シャオ・メイメイ。・・・答えるまでも無いでしょう。私を止める事など最早、誰にも出来はしない。・・・そして、すでに運命の歯車は噛み合い、廻り出している。・・・終焉と新たな時代というシナリオに向けて・・・」

 アリーザは心底、不気味な笑みを浮かべる。


 「・・・アリーザ、お主・・・。星さえも意のままにするつもりか・・・」

 シャオはこのかつての仲間だった女の狙いがもっと別なものだと確信した。


 彼女の悪寒は急激に強まっていく。


 ならば、とシャオは覚悟を決める。

 ヴァリトラの携える刀剣を構えた。

 「・・・呪われし魔剣よ。我が霊を糧とし、その呪を解き放て・・・!!!」

 剣の鍔元の異形の眼が、カッと見開き、ヴァリトラの腕に触手を伸ばし突き刺し同化する。

 「ぐぅうううっ!!!」

 コックピットのシャオの肉体に歪な肉腫が走り、血管を浮立出せる。


 「・・・それは、オリジナルの半身『クリカラ』。封印を解いた、本気、と言うことね・・・」

 アリーザがジズの装甲を換装し、無数の銃砲を展開させる。

 







 シャオは想う。

 自分の命を引き換えにしてでも、この者を倒そうと。

 そして救おうと。

 それぐらい出来なければ、先に逝ったロゼに恥ずかしくて顔向けができない。







 そう彼女は心に決した。








 「さあ、ミカエラ!!! すべてを喰らい尽くしなさい!!!!」



 アリーザの呼び掛けに呼応するように、邪龍が十二の首をかかげ、その巨大な咢から咆哮を木霊させた。