複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.148 )
- 日時: 2014/05/04 15:03
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: zc76bp3U)
Act.15 すべての始まりにして終わりなるもの(後編)
人は脆弱だ。
実に弱い生き物である。
故に力を求める。
己の大切な居場所を奪われないように。
己の大切な者の存在を護るために。
渇望するのだ。
絶対の力を。
二度と大切なものを失わないように・・・。
「・・・竜種細胞は確かに強力だわ。身体機能の強化もさることながら、なによりドラグーンという兵器も扱える。・・・しかし、何事にも限界は訪れる。肉体の限界然り、ドラグーンの適正年齢超過も然り・・・人に与えられた力には制限がある・・・」
アリーザは眼を閉じて静かに語る。
「・・・失くしてから気付く。もっと自分に力があればと・・・あの時失ったものを取り戻せたかもしれない・・・」
「・・・アリーザ・・・」
シャオはアリーザから放たれる人外極まる波動に素早く剣を構える。
「・・・研究途中のデータでしたが、とても役に立ちましたよ。エキドナの遺産は・・・このように肉体もドラグーンも強化することが可能となった・・・まあ、代償は高ったですが・・・」
アリーザは腕のひび割れのように広がる痣を見せる。
瞳は徐々にドス黒く変色し、光が消え闇に染まる。
亀裂は痛々しく、肉体全身の奥まで刻まれていった。
「アリーザ・・・お前はそこまでして・・・すべてはあの日から定められていたのか・・・これも人が竜の力を手にした宿命か・・・」
操縦桿を握る手に力が籠る。
迷いを捨てねば、倒せない。
シャオは揺れる心の狭間で、口惜しさにきつく唇を噛み締めた。
濃厚な闇の気配に誘われ、ジズの背後に邪龍が幾つも口を開く。
それぞれが暗黒の球体を形作り、邪悪なエネルギーを濃縮させていく。
シャオは剣の刃を添えるように自身の前にかざす。
「・・・アリーザ、力に取り憑かれた者の末路は、自身も力に喰われてしまうのじゃよ・・・」
添えた剣が業火に包まれる。
ヴァリトラの機体も猛炎に包まれる。
「お前を救ってやろう。そして、共に逝こう、あやつの傍に・・・」
そして慈母の微笑みを見せた。
邪龍が一斉に黒い閃光を集束させ、解き放った。
空間を虚無が覆い、漆黒に染め上げる。
シャオはバーニアを全開に加速させる。
アリーザを見据え、破壊の波を睨む。
次の瞬間、彼女は奥の手を使った。
若かりし時代に会得していながら、初めて用いる秘技。
—————何故ならそれは、自らの命の灯火を燃やすものであったからだ。
ヴァリトラの機体の中心点に沿って七つのチャクラが輝き光り、内包するエネルギーを故意に暴走させることによって爆発的な理力を解放する。
その溢れんばかりの輝跡はこの場にいる全員を注目させた。
「超絶機神剣・炎帝熾焔凰竜撃!!!!!!!!!」
炎に覆われたヴァリトラが巨大な不死鳥の竜となり、迫る暗哭の闇幕を切り裂いていく。
炎と闇が拮抗する。
だが、炎は闇を焼き払い邪龍の首をことごとく薙いでいく。
断罪の焔幕がすべてを覆い尽くした。