複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.149 )
日時: 2014/05/06 12:22
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: GsLNLUDc)


 邪龍の中心核から、不気味な声が響く。

 「・・・セツナ・アオイ・・・待チ侘ビタゾ・・・」

 ワイバーンD.Rが一旦距離を取り、両極剣を構え直す。

 「その声は・・・あなたはミカエラ・・・?これは、あなたの仕業なの?」

 中心核に問うセツナ。

 「フフフ・・・ソウダ・・・ソシテ、オマエヲ待ツ者ガマダ、イルゾ」

 そう言うと肉が盛り上がり、四肢と身体を触手に覆われたミカエラが悍ましい姿を現した。

 「わたしを待つ?・・・どういう・・・?」

 「フフフ・・・オマエガ、良ク知ル者、ダ・・・」

 再び中心核の一部が盛り上がり、大きな肉腫を覗かせると、そこには三体のドラグーンが肉に埋まり拘束されていた。

 「・・・なっ・・・」

 驚愕に見開くセツナ。

 捉えられた三体の竜機、ダハーカ、ザハーク、そしてワイアーム。さらにその機体の頭部付近の肉片に三つの人影が目視できた。

 「・・・そんな・・・」

 肉腫に埋め込まれるように、触手が絡みついた三人、リーシェ、リーファ、シズクの変わり果てた姿があった。

 「姉さんっ!!!!!!」

 セツナはワイバーンで斬り込もうとすると触手が鋭利な刃物の形状を取り、彼女たちの首筋に当てられる。

 セツナを牽制するように。

 「・・・慌テルナ、セツナ。舞台ハ始マッタバカリダ・・・」

 「!!? ミカエラ・・・!!!!」

 セツナの顔が焦りに染まる。

 この状況、シズクたちが人質に取られていると言ってもいい。

 これでは・・・。

 その時、上部で激しい炎が吹き荒れ、残りの邪龍の触首がことごとく焼き尽くされたのを目撃した。



















 シャオが繰り出したヴァリトラの不死鳥の炎が邪龍を焼き払い、殲滅していく。

 眼前にアリーザのジズが待ち構える。

 「アリーザァアアアァアアアッッ!!!!!」

 「老兵には、退場願いましょう」

 ジズが前面に機体の手腕を差し出す。

 その腕が肉の触手に覆われて歪で巨大な銃砲に変化する。

 「ゲノムコード修正、機体出力オーバードロー」

 銃砲に暗い影が寄り集まる。

 「テトラマトリクス・ドグラマグラッッッ!!!!!!!!」

 瞬間、怨嗟の呻きと共に特大の黒光が放たれた。

 衝突、ぶつかり合う鳳凰の猛火と悪霊の絶叫。

 炎と影が混ざり合い、暴れ洩れ、咆える。

 だが、炎の勢いが急速に衰え、その勢いが揺らいだ。

 「ううっ!? がはぁあっっ!!!!」

 ヴァリトラのコックピットで操縦桿を握るシャオが大量の血を吐き仰け反った。

 血管が破れ、全身から鮮血が吹き出した。

 「ぐふぅっ!! 身体が、蝕ま、れ、る!? これ、はっ・・・!?」

 「ふふっ、直接貴方の中の竜種細胞を死滅させているんですよ。こんな風に・・・」

 ヴァリトラの炎を覆うように暗影がより一層濃くなると、機体はコントロールを失い、あらぬ方向に落墜する。
 
 そして、機体を暗い影の闇光が貫いた。

 「ぐぅああああぁああああっっっ!!!! こ、このままでは・・・!!!」

 シャオは墜ちる寸前、コックピットから邪龍の中心核を視る。

 そこにはワイバーンを駆るセツナと肉腫に埋もれたシズクたちが確認できた。

 シャオは悟った。

 もはや己は役割を終えた、と。

 未来は若者たちへと託された、と。

 混濁する意識の狭間で静かに想った。

 「セツナ・・・シズク・・・あとは、任せたぞ・・・!!!!」

 ヴァリトラが身を翻し、炎剣を振り上げ、

  
 投げ放った。


 渦を巻いて旋回する豪焔。

 
 瞬間、中心核まで飛来し、肉腫を斬り払い通り過ぎた。


 シズクたちを覆った触手は切り裂かれ、その拘束から解かれる。


 「姉さんっ!!!」


 瞬時にワイバーンが落ちるシズクたちを受け止める。


 咄嗟にセツナは炎剣が飛来した方向を視た。
 

 頭を失った邪龍の断面が肉で膨れ上がり、ヴァリトラを飲み込んだ。