複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.150 )
日時: 2014/05/07 13:27
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: e7NtKjBm)


 皆、一様にヴァリトラが飲み込まれ、肉塊の中へ消えていくのを括目した。

 「シャオ老師っ!!!」

 「師匠っ!!!」

 フェン、ルウミンが悲痛の声を上げる。

 「先生っ!!!」

 「メイちゃんっ!!!」

 ミヅキ、エウロペアも驚愕する。


 「シャオ先生っ!!!!」

 セツナは片手にシズクたちを庇いながら、助けに向かおうと翼を広げるが、その行く手を首の無い邪龍の長い胴体が幾重にも遮る。

 「!!」
 
 「ククク、ドコヘ行ク? 言ッタダロウ、舞台ハ、コレカラダト」

 ミカエラが嘲笑する。


 上空で歪に変異したジズの銃砲の腕をかかげ、アリーザが声を張り上げる。

 「さあっ! これで、すべての『オリジナル』が揃った!! 別たれた十三体の『器』・・・呼び覚ます刻がきた・・・!!!」

 そして中心核のミカエラに指示を出す。

 「ミカエラ! 燻り出せ!! 星に巣食う悪辣の原罪を!!! いにしえの竜たる祖を!!!! 引き摺り上げろっ!!!!!」


 ミカエラは頷くと、意味深な笑みを浮かべてセツナを一別すると再び肉腫の奥深くへとその身体を沈み込ませていった。



 脈動する邪龍。

 肉塊が粟立つ。



 途端に失われた首が瞬く間に再生し、それだけには止まらず、中心核から一際巨大な、他の頭蓋よりもおおきな竜頭が迫り出し顔を覗かせた。


 十三の頭を持つ龍が誕生した。

 

 その竜頭が他の竜蛇を従えるように凄まじい咆哮を響かせると、共鳴するように共に咆哮を木霊させた。




 一体何が始まるのか。

 これ以上何が起きるのか。






 その時、大気が鳴動した。


 空が嘶いた。 大地が振るえた。 海がさざめいた。


 世界が。 星が。 地球が。


 呼応した。
  







 割れる大海。 歪む空間。 吹き荒ぶる乱流。

 穴。

 地球の奥深くまで続くであろう奈落の入り口。

 その穴から黒い塊が吹き出した。

 それは竜種だ。

 夥しい数の竜種が埋め尽くす。

 空も海も悍ましい異形の大波がひしめく。







 そして、その穴から誘われるように白く発光する『それ』が姿を現した。

 大きく伸び上がる光の支柱。

 雲を抜け、成層圏にまで達する輝きの燐光。

 広げられる光翼。

 十三の天空を染め上げる白塵の極光。

 光輪の冠を頭上に頂き、神々しい煌めきと共に飛翔する。





 『それ』は光。


 『それ』は絶対者。


 『それ』は言語を超越した存在。


 すべてのものに、あまねく威光と畏怖を与えん外なる宇宙そらの来訪者。









 その日、世界は輝きに満ちた。