複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.158 )
日時: 2014/05/17 22:36
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: fbqYC.qT)

 Act.16 流星が降る、蒼き星の輝きは永久に


 薄れいく意識。

 ミカエラは闇の底に己が沈むのを感じた。

 力を得た代償として、喰われてしまうのは仕方がない。

 自業自得だ。
 
 だが、この魂までは渡さない。

 決して色褪せない記憶が、想い出が輝きを失わずに彼女の胸の奥に残っている。

 忘れてなるものか、と。

 傀儡にに成り果てても、奪わせないと。

 彼女はそう、心に期した。




 その刹那、原初たる竜に同化されつつある中、彼女の心に一際大きく響き渡る声が届いた。



 『諦めるなっ!!! ミカエラッッッ!!!!』



 意識の奥から揺さぶり起こす力強い想いが、自身を闇の海から引き上げる者の姿が視えた。

 おもわず伸ばした掌をしっかりと掴み取る暖かい手。

 その先に蒼いパイロットスーツを身に付けた黒髪の少女が————










 「ミカエラッッッ!!!!」




 
  

 大きく眼を見開き、意識が覚醒したミカエラ。

 既に肉体は顔を、そして僅かに伸ばした左腕を覗き肉腫に覆われていた。

 しかし、その腕をしっかりとセツナが握り引き寄せる。

 「ミカエラ! 諦めるな!! 一緒に帰ろう!!!」

 いや、セツナだけでは無かった。

 穴が開いた肉腫の壁を閉じさせないようにユグドラシルが四肢で押さえている。

 外宙で暴れる虚龍をエリーゼル、マリア、ルウミン、フェン、汎用ドラグーンに乗ったシャオ、そして、シズク、リーファ、リーシェのドラグーンたちが相手取り抑え込んでいた。

 内部核では、リンドブルム、ラハブ、ビヒモスが触手群と戦い牽制し、セツナと共にミカエラの腕を掴むスフィーダとリヴァネがいた。


 「・・・なんで・・・」


 驚愕するミカエラ。

 「Oh! まったく世話が焼けるチームメイトネ!! 心配かけないでクダサイ!!!」

 スフィーダが憤慨しながらセツナと共にミカエラの腕を引っ張る。


 「もう十分気は済んだろう? さっさとこんな気分悪いところから逃げるよ!」
 
 リヴァネが蠢き絡め取ろうとする触手を銃で粉砕しながら言う。

 



 「・・・わたしたちはひとりじゃない。わたしたちはみんな、繋がっている。星の命と共に還り、そしてまた生まれる。限られた命の中で、あなたにも精一杯生きて欲しい。・・・さあ、ミカエラ。行こう」

 セツナは優しい笑顔でミカエラに語りかける。





 ミカエラは思った。


 嗚呼、この少女にはやはり敵わない。


 でも、悪い気はしない。


 それも良い。


 とても清々しく、とても満ち足りた気持ちだった。

 
 自然と肉腫の檻から、その躰が解き放たれる。


 心の枷と共に。


 縛る者は無い。


 真の解放。




 少女は本当の意味で自由の翼をその背に宿した。