複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.159 )
- 日時: 2014/05/18 20:10
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 2zitOR7a)
多頭を振り上げ、四方八方我武者羅に光線を放ちまくる虚龍。
まるで我を失っているかのように暴乱の限りを尽くす。
それらを隙を見ては対抗する複数のドラグーン。
「的が大きいのは攻撃し易いですが、ドラグーンに蓄積された活動酸素容量も限界に近いですわ!」
「さすがに宇宙では無理があるよ。そういう設計されてないし」
エリーゼルとマリアが攻撃しながら言う。
「このままだと窒息するかも・・・!!」
「水中特化使用なら、少しは持つのかな」
ルウミンとフェンがしなる蛇腹の攻撃を躱しながら話す。
「泣き言を言うておる暇は無いぞ! 手を休めるな!!」
シャオが汎用ドラグーンのアサルトライフルを連射。
「あの子たちが戻ってくるまで持ち堪える!」
シズクが竜頭に双剣を斬り付ける。
「私たちが時間を稼ぐ間に・・・!」
「この程度・・・!!」
リーシェ、リーファが背中合わせで立ち向かう。
その中心部、コア内部からドラグーンたちが飛翔してくる。
ユグドラシルが護るようにしんがりを務め、襲い来る肉の触手を破壊している。
「オラオラ! 化け物! こっちだ!」
「穴が完全に塞がりましたわ」
「ギリギリ。危機一髪」
それぞれ操縦桿を握り、複雑なコンソールパネルを操作するドミネア、ペルーシカ、セラフィナ。
追従するようにリンドブルム、ラハブ、ビヒモスが翔ける。
「・・・この借りは、いずれ利子を倍にして返してもらいますよ、ミカエラ」
バイオナノ治療術で修復した腕を擦り、渋い表情をするセレス。
「なんで、こんなことに・・・そもそも・・・」
ブツブツ愚痴るディラ。
「えらい目にあったぜ・・・」
疲れた顔のアシェル。
ワイバーンに支えられるティアマトのコックピット内のミカエラが呟く。
「・・・私はまた、お前に救われたな・・・セツナ・・・」
苦笑いなのか、微妙な表情のミカエラ。
「わたしだけじゃない。みんなの力が救った」
セツナは諭すように言う。
中心部から脱出したセツナたちを追う様に虚龍が首を巡らせ襲うが、動作に機敏さは無く、狙いも定まっていない。
「こいつ、かなり弱ってるのにまだ追ってきやがる!! ドラグーンのエネルギーも活動限界に近い! どうやって倒すんだ!?」
ユグドラシルが大槍をかかげ、首を引きつつ闘う。
「わたしがケリを着けたいけど・・・武器が・・・」
セツナの両極剣は既に無い。かといって他のドラグーンたちの武器は扱う事は出来ない。
仮に使えたとしても虚龍の質量に対抗するほどのエネルギーは得られないだろう。
「セツナ! これを使え!!」
シャオが汎用ドラグーンの背中に背負っていた禍々しい眼を持つ剣を投げる。
弧を描くそれを受け取るワイバーン。
「シャオ先生! これは!?」
「儂にはもう扱うことは出来ん。それが唯一吸収されずに残されたオリジナルの欠片・・・いや、まだ残っておったか、おい、ミカエラといったかの。お主の機体にまだ僅かに残滓があるようじゃの」
シャオがミカエラに声をかける。
「・・・そうか、そういうことか。確かにまだ残っている。これを使えば・・・セツナ! その剣を構えろ!」
ミカエラの言うとおりに剣を正面に携えるセツナ。
「ティアマト・・・お前の残された力をすべて注ぎ込め!!」
ティアマトの機体から何本もの蛇状のアームが現れ、ワイバーンのかかげた剣に捲き付く。
「セツナ! イメージしろ!! 『力』を!!! あいつを倒す力のイメージを!!!!」
静かに瞳を伏せ、イメージするセツナ。
浮かべるは、母なる星、地球。
そして、すべてを包み込む『蒼』。
剣は徐々にその形状を変化させ、淡い光りを纏う。
青い。
どこまでも碧い。
優しく、慈しむように照らし出す無垢なる蒼さ。
そこには一筋の蒼光が煌めいていた。