複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.16 )
- 日時: 2014/03/26 11:58
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 1lVsdfsX)
ドラグーンが蒼い閃光を纏い原竜種に肉迫する。
「必殺!!飛龍流星剣・斬!!!!」
巨大な蒼剣の刃が流星のごとく加速し原竜種の巨体を突き抜ける。鱗を切り裂き、骨を断ち、肉を蒸発させていく。
「!!?」
瞬間、巨翼が薙ぎ払う様に迫り、ワイバーンは身を翻し回避する。
原竜種は生きていた。半身と肩翼を失い多大なダメージを与えた様だが、切り裂いた肉体が徐々に修復し始めていた。
体表を覆う鱗が強靱な鎧となり、セツナの攻撃に耐えたのだ。
半身を失いながらも翼を羽ばたかせ、ワイバーンにその巨体で猛烈な体当たりを繰り出してくる。
「くっ!」
ギリギリで巨体を躱し反撃に移ろうとした時、巨大な鉤状の尾がワイバーンに直撃した。
「うわあああああっ!!!!」
凄まじい衝撃を受けてきりもみ状に弾き飛ばされるワイバーン。それを追う原竜種が醜悪な口を開けて飛来する。
コックピットのモニターに映る。それはまるで、彼女の命を貪ろうと死の顎が連なる凶悪な牙で噛み砕くの心待ちにする様に。
セツナは己の死を間近に感じた。
巨竜の太い牙が機体の胸に、操縦席に食い込む、その刹那—————。
原竜種の顎先が消えた。
唐突に消失していた。
宙に舞う、無数の肉片と緑の体液の飛沫。
セツナは顎を失い落下する巨竜の上空でそれを視た。
眩しく照らす陽光の影の中、その影よりも黒い竜、漆黒のドラグーンが飛翔していた。
両腕から伸びる闇色の双剣を携えて。
それは、あたかも幻影のごとく浮かび上がり、こちらに向き直った。
暗闇にはめ込まれた紅玉石の瞳が、心の底まで見透かすようにセツナを捉える。
まるで死神が死すべきものかどうかを見定めているとセツナは思った。
そして漆黒のドラグーンは黒い剣を眼下で苦しみ悶える原竜種に示す。
「・・・止めを刺せと?」
漆黒のドラグーンが頷いたように視えた。
「言われなくても・・・!!!」
ワイバーンは再び蒼い波動をほとばしらせ、蒼い輝きの燐光を放つ大剣を構え原竜種に急降下していった。
「これでっ!!」
蒼穹の流星が巨竜を貫き穿つ。
「終わりだあああああ!!!!!」
断罪の一撃が眩い閃光の帳となり包む。
大気の揺らぎが雲を撫で、どこまでも一望できる青空が広がる。
原竜種は跡形も無く、その姿を消滅させた。
セツナは上空に佇む漆黒のドラグーンを仰ぎ見る。
影の諦観者は一部始終を見届けると、黒翼を広げ空の彼方に飛び去って行った。
セツナはワイバーンを通常状態に戻し、漆黒のドラグーンが去った方角を見つめた。
一体何者なのか、何故自分を助けたのか。
解らない事ばかりだが、何故か予感がしたのだ。
「・・・また逢うような気がする」
余談だが、後から合流したマリアたちに散々怒られたが無事で良かったと泣き付かれた。