複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.160 )
- 日時: 2014/05/26 22:31
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 2zitOR7a)
蒼の竜騎士、ワイバーンD.Rの両手には、遍く星の輝きが見えた。
剣の様でいて物質の理から外れたそれは無形の光。
淡く煌めく無尽の揺らぎ。
「これは・・・!」
セツナは己が創り上げた無蒼の閃刃に宇宙創造の根本を成す力の片鱗を感じた。
「ほう・・・! これは、また何とも・・・!!」
シャオは心の底から驚いた。
ここまで見事に『気』を具現化した者など知りはしない。自分でさえ不可能だろう。
「ふぅ・・・どうやら上手くいったみたいだな、私が出来るのは此処までだ・・・後はお前次第だ、セツナ」
力を極限まで抽出したティアマトは元の形状に初期化され、ミカエラは汗を拭う。
「さあ、セツナよ。カタをつけてやれ。星の意志を在るべき場所へと還すのじゃ」
シャオがいまだ皆が応戦している虚龍に視線を向ける。
「はい、これですべてを終わりにします。シャオ先生」
セツナは毅然とシャオに言い、ミカエラに向き直る。
「ミカエラ、この戦いが終わったら一緒にバハムートに行こう。あなたのことがもっと知りたいから」
真顔で告げる。
「・・・考えとく」
少し照れたように顔を背けるミカエラ。
「うん」
笑顔で頷くセツナ。
そして、両手に携えた無形の蒼き刃を前方に視える虚龍に向けて静かに構えた。
「・・・感じる・・・星の鼓動が・・・聞こえる・・・銀河の囁きが・・・そう、これがわたしたちの、母なる惑星、『地球』の、生命のエネルギー・・・」
セツナはワイバーンを通して体全体に優しい温もりが伝わるのを実感した。
そしてセツナの心と溶けあうようにして、力が洗練されていく。
暖かく出迎える星の意志が大きなうねりとなって、彼女を無限の領域に迎え入れた。
星の、生命に————。
『神・飛龍モード解放』
ワイバーンの全身を包む蒼い光の粒子。
それは機体全体を覆い、一頭の巨大な蒼光の飛龍と化す。
そして瞬時に凄まじい疾さで虚龍に向かった。
爆進。
一筋の流星が一直線に翔け抜ける。
途中それに気付いた者たちが通り過ぎ様に声を掛ける。
「ミス・セツナ! 期待していますわ!!」
「セツナっち! ファイトだよ!!」
エリーゼル、マリアが。
「セツナさん! 頑張って!!」
「勝利祝いに美味しいものいっぱい作るよ!!」
フェン、ルウミンが。
「行け! そのままブチ抜いてやれ!!」
「これで終わりにして下さい!!」
「勝利の加護を!!」
ドミネア、ペルーシカ、セラフィナが。
そして、漆黒のドラグーン、ワイアームの隣に並ぶ。
「・・・行け、セツナ。お前が辿り着いた答えの先にあるものを私たちに見せてくれ」
数刻、僅かの間セツナと視線が重なるシズクが言う。
加速し過ぎ去る蒼き飛龍。
星々が交差する宙空を翔ける。
虚龍が咆哮し、複頭の首を折り曲げて防御態勢を取る。
だが光に触れた途端瞬時に蒸発してしまう。
次々と虚龍の蛇首は打ち砕かれ、蒼い光竜は中心核に届いた。