複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.164 )
日時: 2014/07/06 03:59
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 5gZrZwZo)

 Act.17 そして少女たちは竜を狩る



 
 
 大気を切る耳鳴り。

 身体の芯まで響く空震。

 突然空から巨塊が墜ちてきて大地に勢いよく叩きつけられ粉塵を巻き上げクレーターを創り上げた。

 混沌の淵と化し荒れる地上。

 大きく穿たれた落下地点の孔から猛り狂う巨大な龍が一匹その醜悪な巨体を震わせ、茶褐色の瞳に憎悪を映しながら咆えた。

 その視線の先、遥か上空を見据えて。

 終焉に向かうこの世界で何者にも屈せぬ絶対たる存在である己に立ち向かう強敵に殺気と怒気を振りまき、強かに咆哮する。

 己に手傷を負わしたあの『鋼の竜』に対して畏怖とも呼べる感情がこの手負いの竜種に湧き起こるがそれを理解する思考は存在しない。

 
 一瞬この竜種に本能からの警告で『逃げる』という選択肢もあったのだがそれを猛る怒りの激情に流されるままに無視した。


 傷ついた両翼を羽ばたかせ憎い目の前の敵を屠るべく怪物は高く飛翔する。




 ————その瞬間。



 "空に蒼い閃光が走る"

 そして翔け抜ける。

 蒼く染まった世界に、光塵が指す。

 青白い光りは見上げる竜種を確かに照らし、今。

 降り注いだ。

 竜は何事かと、見上げその顎を開く。

 逆鱗は発光し、爆禍は躰全体に収束し、今にも焼き付かさんと燃え盛る。

 竜の翠色の瞳孔には、蒼く燃える躯体を持つ鋼の龍がまるで星の輝く宇宙を抱いているかの様にて捉えられた。


 青く燃える炎を纏うその肢体。

 碧く煌めく光りを纏うその翼。

 星の息吹をを宿した、おのれ等の天敵たる最強の狩人が。

 悲鳴とも断末魔ともつかぬ叫びを上げ、あらゆる不浄を焼き尽くす蒼の火は彼を包みこむ。

 それはすべてを飲み干す様に極光を生み出し圧倒的な力量を以って彼をあまねく星の御許に還元していった。

 塵ひとつ痕跡すら残さずに。