複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.27 )
日時: 2014/03/29 16:48
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: e2Ia0l.i)

 ヨルムガント訓練施設バトルシュミレータールーム。

 大勢の乗員が詰めかけ、ギャラリーの波を作っていた。

 緑の大地のバーチャルフィールドに六機のドラグーンが縦横無尽に暴れまわる。




 「ほらほら〜っ、かかってきなさ〜い!!」

 マリアのヒュドラがアームガトリングでセラフィナのニドヘッグを牽制する。

 「しつこい。でも効かない」

 巨大ハンマーを振り回して弾丸を弾きながら突進し攻撃するニドヘッグ。それを太い腕でガードするヒュドラと互いに肉弾戦になる。








 「あなた、なかなか感が鋭いですわね。素晴らしいですわ」

 エリ−ゼルのペンドラゴンがペルーシカのヴィゾフィネルと戦っている。多方からファンネルによりビームの嵐を可変する鞭を操り、ことごとく打ち払い、防御するペルーシカ。

 「貴方がたの戦い方を研究させて戴きました。とても興味深かったですよ」

 無数の刃が連なる鞭を振るい、猛烈に攻め立てるヴィゾフィネル。それを華麗に躱しながらライフルで反撃するペンドラゴン。








 剣と剣が打ち合わされ火花が散る。

 「これが原竜種を切り裂いた剣か!アンタかなりの修羅場を潜ってきたみたいだな!!」

 鋭いレイピアの切っ先を連続で突き刺すドミネアのフレースヴェルグ。

 「・・・あなたも相当な腕を持ってる」

 それをすべて長剣で逸らし、僅かな隙をついて斬り込むセツナのワイバーン。



 
 多くのギャラリーが歓声や悲鳴、息もつかせぬ技の応酬に感嘆の溜息をつき、驚愕の表情で見守っていた。

 「はははっ、視ろ、タチバナ。奴等、実に楽しそうではないか」

 そう笑い葉巻を吹かすヴェロニカ。

 「先輩はいつも突飛なアイデアを思いつきますよね」

 そう言ってミヅキは苦笑いし、口調が昔に戻っていることに気付く。

 「竜機乗りも人間だ。どんなに肉体を精神を鍛え、強化しても必ず綻びが生じる。それに彼女たちはまだ若い、若すぎる。人類の未来を担い、重責を背負わせるのはあまりにも酷だ」

 そして懐かしむように義手を眺め、ヴェロニカは言う。

 「・・・かつての私たちには成せなかったことを肩代わりさせてしまった」

 「ヴェロニカ先輩・・・」

 ミヅキもかつての若かりし少女時代を思い出す。

 世界を救えると信じ、未来に邁進したあの時代。

 今はその役割は彼女たちに変わったが志は今も変わらない。

 そしてミヅキたちはドラグーンを駆る少女たちにあの頃の自分を重ね、暖かくも力強い眼差しで見守るのであった。