複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.35 )
日時: 2014/03/31 21:14
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: QgoEX629)

 バハムートの艦体付近で戦闘するエリーゼルたちは、突如、金色の輝きを放つドラグーンが根こそぎ竜種を消し飛ばすのを目撃した。

 黄金の竜機は超スピードで竜種の群れを駆け抜けると、怪物たちは塵芥ちりあくたとなり、消えていく。

 呆然としている間に、凄まじい速度で竜種を葬る謎の闖入者ちんにゅうしゃ。そして瞬く間にすべての竜種を駆逐してしまった。

 ゆっくりと甲板に降りる金色のドラグーン。

 エリ−ゼルたちは身構えるが、それを飛翔するワイバーンが間に入り止める。

 「ミス・セツナ、この方は一体・・・?」

 エリーゼルがセツナに問うと、金色のドラグーンのコックピットハッチが開き、少女が現れる。

 金色のアーマスーツとその髪以外はマリア・アースカードそのものだった。

 「!? ミス・マリア!?しかし、これは・・・!?」

 エリーゼルたちは見知った顔に驚くがセツナは表情を変えず見守る。

 マリアらしき少女は皆に向き直り、本人の声で話し出した。

 「わたしはイリア。そしてマリアでもある。わたしたちは二人でひとつの存在。わたしたちは常に共にある。それを忘れないでほしい」

 そして少女は静かに眼を閉じ、言う。

 「・・・いずれ訪れる、終末のときは近い。すべての竜は世界の頂のもとに集う。そして、知るだろう。星のおおいなる意志を・・・」

 少女の身体が輝き、その中からピンクの髪の少女が裸身で現れた。

 倒れるマリアを抱きとめるセツナ。

 いつのまにか黄金のドラグーンはヒュドラの外装を取り戻していた。

 皆、何が起きたか判らず、ただ立ち尽くしていた。

 「・・・あ、あたしは。みんな・・・」

 セツナの腕の中、マリアが意識を取り戻す。

 「・・・詳しい話は後にしましょう。そのままでは風邪をひいてしまいますわ」

 エリーゼルが促し、皆、疑問のまま艦内に戻って行った。








 ラウンジで毛布に包まり、暖かいミルクのカップを持つマリアは淡々と己のことを話した。

 「あの子はあたしの妹、イリア。あたしたちは本来、双子として共に生まれるはずだった。でも、お母さんのお腹の中で竜種細胞が変異して融合してしまったの」

 マリアが語る自身の出生を静かに聞く一同。
 
 「・・・ううん、違う。あたしが、あたしが食べたの。お腹の中で、あの子を、お母さんも。そして、殺した」

 マリアは涙を流す。カップを持つ手が震える。

 「あたしは人間じゃない。化け物なの。生まれた時から、ずっと。だからお父さんは、あたしを・・・」

 エリーゼルはマリアを抱きしめる。優しく、強く。

 「違いますわミス・マリア。あなたはれっきとした人間です。決して化け物なんかじゃありません」

 そしてマリアの頬の涙を拭い、微笑み、言う。

 「だって、こんなにも暖かくて可愛らしく、素敵ですもの。そして誰よりも強い心を持つ優しい女の子。化け物のはずがありませんわ」

 マリアはエリーゼルの胸の中で、静かに言う。

 「あの子が、イリアが、『恨んでない』って。『お姉ちゃんと一緒になれて嬉しい』って・・・」

 エリーゼルは優しく頷く。

 「ずっと、ずっと一緒にいてくれた。あたしの中で、見守ってくれてたの・・・」
 
 己の中で生き続ける少女。

 血を分けた半身。

 もうひとりの自分。

 ずっと繋がっていた絆。

 それは黄金の輝きで照らす、眩いもの。

 マリアは誓う。

 自らの一部となった少女と共にこれからも生きて行こうと。