複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.36 )
日時: 2014/03/31 13:49
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: pYv9VleS)

 Act.5 咆哮、蒼き飛龍 激動の果てに


 蒼いドラグーンが一機、海面擦れ擦れを波立てて飛翔する。

 それを追う様に魚竜が群れを成し、跳ね泳ぐ。

 ワイバーンは低空飛行を保ちながら振り返り、頭部に内装されたチェーンガンを撃ちまくる。散裂する弾を喰らい何匹かは海中に沈むが、残りの魚類型の竜種は波しぶきをあげて猛然と襲い掛かってくる。

 機体を翻し、飛び掛かる竜種を躱しざまに長剣で両断する。返す刃で、さらに数匹を斬り捨て、海の藻屑にする。それでも魚竜はその数を減らすことなく執拗に追撃してくる。

 ワイバーンはそれらに構うことなくスピードを上げ、前方の、本来の目的の対象に眼光を移す。

 コックピット内のモニターに映る漆黒のドラグーン。

 まるでこちらを誘導するように、時折振り返り確認している。

 「・・・上等だ。その誘いに乗ってやる」

 セツナは鋭い視線で黒翼の竜機を見やった。

 













 数時間前、バハムート艦体付近の上空。

 いつもの様に竜種を殲滅した三機のドラグーン。

 「だいぶこの力にも慣れてきたな〜。でも凄く疲れるから、対原竜種以外は使わないようにしよう」

 マリアは黄金のドラグーン、ハイドラの指を動かしながら言う。そして光り輝くと元のヒュドラに換装する。それと同時にコックピット内のマリアも金色の髪とスーツからいつもの桜色の髪と黄色のスーツに戻る。

 あれから幾度か試し、己の内なる力と向き合ったマリア。妹のイリアは表立っては出てこないが、常に胸の中にいるのを感じた。それはとても暖かい温もりだった。

 「ミス・マリアが元気になって良かったですわ。マスコットがいないと艦内はお通夜みたいな雰囲気でしたから」

 紅のドラグーン、ペンドラゴンの中でエリ−ゼルは微笑み言う。そして小さく呟く。

 「・・・自分と向き合う。わたくしにもできるのでしょうか?この忌まわしい血の連鎖を断ち切る事が・・・」

 そう言ってスーツの腕の部分を開口し視るエリ−ゼル。そこにはNo.13の刻印。

 
 蒼いドラグーンが長剣を携え、佇む。

 ワイバーンの操縦席でセツナは憤りを覚えていた。

 自らの力の限界に。

 近年稀にみる竜種の増加、そしてそれに伴う襲撃と出撃の多発。並みの竜種ならば雑魚同前なのだが、原竜種はそうはいかない。日増しに強力になり、その脅威を増してきている。

 このままでは、いずれ対抗する事が出来なくなってしまう・・・。

 コックピットで僅かに顔をしかめて歯噛みするセツナ。

 その時、レーダーに反応が現れた。新手かとモニターを確認すると遥か、前方に黒い影が飛翔している。

 それは、漆黒のドラグーン。

 以前、セツナの危機を救った謎のドラグーン。所属は不明。データベースにも情報は無かった。

 黒の竜機はこちらを見据え、まるで己の心内を見透かすように滞空している。

 セツナは他の二機のドラグーンを見るが、気付いた様子が無い。どうやら自分にだけ信号を送ってきているようだ。

 すると黒い諦観者は身を翻し、上空に飛翔するとこちらを見て立ち止まる。まるでついて来いと言わんばかりに。

 セツナはその意図を瞬時に理解し、背後の二体の竜機を見る。一瞬迷順したが意を決したように、ワイバーンを加速させ、その場を離脱した。

 己の心のままに。

 何かが変わろうとする予感があった。