複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.37 )
日時: 2014/03/31 21:02
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: QgoEX629)

 漆黒のドラグーンを追いかけ、飛翔するワイバーン。

 どういう思惑で、何のために姿を現したのか。その正体と目的は。それと同時にセツナは思う。これを機に自分自身の何かを掴めるかもしれないと。

 互いに着かず離れず飛行し、海上を行くとセツナたちの眼前に島が視える。モニター越しに確認するとどうやら活火山のようで頂上から黒々と噴煙を上げていた。

 セツナはデータベースから地図を開き、現在地を確認する。ここはいくつもの島からなる諸島で太平洋の中心のようだ。漆黒のドラグーンはその諸島のひとつ、火山がいまも黒煙を出す島へと降り立った。

 手付かずの原生林に覆われた火山島を一別し、セツナもその後に続き、降り立つ。

 むき出しの岩の大地に佇む黒色の竜機。

 赤い双眸を光らせ、セツナの到着を待つ。機体の外装は黒い装甲板に覆われ、背中に大きな翼があるその姿はどこかワイバーンに似ている。ワイバーンから鋭角な外装を除けば、より似るだろう。

 岩場に着地するワイバーン。

 「・・・こんなところで何をすると言うの?私に用があるのなら手短にしてほしい」

 セツナは無言でこちらを見つめる漆黒のドラグーンに問う。

 漆黒のドラグーンはその質問に答えるように両腕からその機体の色と同じ黒色の双剣を展開する。

 「・・・そう。それが答え、という訳。私も思ってた。一度あなたと戦ってみたいと・・・!」

 肌を刺す様な殺気を戦闘の合図とし、セツナもワイバーンの長剣を眼前に構える。

 雑音の一切が遮断され、無我の空間が形成される。

 互いに睨み合い間合いを詰める。

 そして双方同時に踏み込み、剣を交えた。

















 バハムートでは突然セツナが離脱し、不穏な空気になっていた。

 エースパイロットの失踪に艦内では、様々な噂が飛び交う。ひとりで原竜種の親玉の討伐に向かった、他の艦隊からスカウトされた等、あまつさえ、戦いが嫌で逃げ出したというものもあった。

 「・・・ミス・セツナ、一体どこに行ってしまわれたのでしょう・・・」

 エリーゼルが心配そうに言う。

 「・・・あたしたちって知ってるようで知らない事多いもんね。セツナっちの事もほとんど知らないし・・・」

 マリアも沈んだ口調で話す。

 セツナという少女のことを考える。他人と常に一線を引き、遠巻きに諦観している。冷静沈着、無愛想で取っ付きにくい性格だが、心に激しく燃える想いを秘めている。

 触れれば火傷してしまうのではないかという程の、強い想い。

 他人には決して見せず、すべて己の中で閉じ込めてしまう。

 それはとても危ういものだ。

 二人の中で言い知れぬ不安が暗雲となって横切った。