複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.45 )
- 日時: 2014/04/08 20:03
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: FTPBoNWE)
蒼い竜機の双眸にまるで意志が宿ったように光が明滅する。
破壊された機器の残骸、チューブやコード、装甲の破片が生き物のように寄り集まり触手となり、その食指を意識の無いセツナの身体に這わせる。
這い寄る無数の機械の触手は少女を絡め取り、ゆっくりと、大破し穿たれたコックピットがあった場所に静かに納められた。
眠る少女を埋め尽くす、さざめき蠢く機械の波。
穿たれた穴は装甲板を幾重にも重ねられ、やがて少女ごとその姿を覆い尽くした。
稼働する機体、埋もれた岩盤を破砕しながら、立ち上がるワイバーン。
機体の各所が血管のごとく、うねり、脈動し、盛り上がる。
大きく後ろに、跳ねるように、機体を仰け反らせた。
顎部を覆う装甲板が弾け、連なる歯を持った巨大な口腔が開く。
放たれる咆哮。
「!!? 何だ今のは!?」
戦っていたすべてのドラグーンたちは島中に轟く凄まじい雄叫びに驚愕し、慄く。
獣の慟哭。
竜の鳴動。
とても禍々しく、とても怖ましいものだった。
「!? いけないっ!!セツナッ!!!!」
刃を重ね合わせていた漆黒のドラグーンは瞬時に身を翻し、戦線を離脱し飛翔した。
後に残されたティアマトのコックピットでミカエラが呟く。
「・・・ドラグーンが共鳴した?まさか、ここに『あれ』が・・・?」
蒼い竜機の機体が血管のように脈打ち、蠢く。装甲が生物の肉のごとく隆起し鋭角な外装を創り上げる。
頭部から禍々しい角が何本もせり出し冠に頂き、背中の翼は、より巨大で歪なものに変貌する。胴体は強靱かつ頑強な装甲に覆われ、四肢はその太さを増し鋭利な刃が形成され、まるで猛獣を思わせる。
あらゆるものを射竦める双眸が見開かれ、凶悪な歯牙を持つ顎が喰らい付くがごとく開口される。
絶叫
それは憤怒。
それは憎悪。
触れてしまった竜の逆鱗。
激昂の覇竜。
それの行動原理はただひとつ。
すべての。
竜種の。
殲滅。
ワイバーンの変貌を目の当たりにし、漆黒のドラグーンを駆る黒衣の少女は戦慄した。全身を突き刺し、削ぎる禍々しい殺気。
そして激しく後悔した。この少女の華奢な身体にこれほどの負の感情が宿っていたことに。
傍にいてあげたかった。
守ってあげたかった。
戦いなどさせたくなかった。
何故こうなってしまったのか。
すべては竜種という異質なモノのが引き起こした運命か。
自分の責任だ。
自分があの子を狂わせてしまったのだ。
「・・・私が救ってみせる・・・セツナ・・・」
黒衣の少女は猛る蒼い暴竜を見定め、固く誓った。