複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.50 )
日時: 2014/04/06 15:23
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: QNX5neil)

 暴竜のあぎとが貪ろうとティアマトのコックピットに迫る。

 ミカエラは死の帳が己に訪れるのを感じた。


 ——————刹那。


 ワイバーンの背部に超加速で直撃する黒い竜機。

 漆黒のドラグーン、ワイアーム。

 半身となった機体から半壊した肩翼を広げ、破壊された腕を蒼い体躯に出力全開で突き込む。

 「・・・必ず助ける!!!セツナっ!!!!」

 崩壊したコックピットで鮮血に染まる黒衣の少女。バイザーは砕け、凛とした瞳には強い意志が垣間見える。

 ワイアームの半腕を強く、より強く抉り込む。切り取られた箇所から機械の触手が伸びる。




 もう少し、もう少しで届く。

 機械の肉塊に埋まり、眠る黒髪の少女。

 その少女を掴もうとワイアームの腕が伸びる。

 「・・・届けええええええええっっっっ!!!!!!!!」

 そして掴んだ。



















 
 夢。

 夢を見ている。

 とても怖い夢だ。

 たくさんの人が竜種に食い殺される。

 竜種に、竜に、蒼い竜に。

 己の掌を見る。

 赤い。

 真っ赤だ。

 誰の?

 みんなの。

 嫌。

 嫌だ。

 こんなのは嫌だ。

 



















 光。

 光が視える。 

 とても暖かい光だ。

 優しく、力強く、眩く。

 懐かしい。

 知っている。

 ずっと昔から

 その柔らかな光にセツナは身を委ねた。

 













 



 蒼い暴竜の背部からワイアームの貫いた腕が引き抜かれた。

 ピタリと動きを止めるワイバーン。

 糸が切れた人形のように傾き、落ちていく。

 大地へと。

 




 
 掴まれていたティアマトも一緒に落ちるが、落下する途中でケツァルカトルとユルングに受け止められた。














 



 半壊した機体を肩翼で滞空するワイアーム。

 その半腕には、静かに眠るセツナが包み込まれている。

 崩壊したコックピットでセツナと同じ黒髪で、まるで姉妹のように似ている少女が横たわり、優しい眼差しで見守っていた。









 遠くから数機のドラグーンが飛翔し、こちらに向かって来るのが視えた。