複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.52 )
日時: 2014/04/05 03:00
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: QpYqoTPR)


 暗闇の深海から陽光が射す海面に浮上する巨大な潜水艦リヴァイアサン。

 歴史的価値が有りそうな絵画や陶器が飾られている艦長室でひとりの女性がモニターの相手から報告を受けている。

 灰色の腰まである長い髪を垂らし、アンティークな椅子に腰掛け、同じくアンティークな机に肘をついて淡々と言葉を聞いていた。

 「ミカエラ。経過は聞いてないわ。私が聞きたいのは結果だけ」

 冷たい眼差しでミカエラを視る女性。

 ビクリと一瞬怯むモニター越しのミカエラ。

 「も、申し訳ありません。ですが、サンプルの採取と戦闘データは収穫がありました。今後の研究に役立つと思います」

 女性は眼をスッと細め、口元に笑みを讃え言う。

 「そう、それはお手柄ね。それで?報告は終わり?」

 「は、はい。報告は以上です。では失礼します。イべリウス艦長」

 モニターの画像が消える。

 女性、リヴァイアサン艦長アリーザ・イベリウスは机の上の見事な装飾が施された骨董品の地球儀に触れ、クルクルと廻し始める。

 「世界にもたらされた新たな秩序、竜種。でも人類にとって本当に抑止と成り得るのかしら?」

 人の歴史は争いの歴史。

 それは遺伝子に刻まれた宿命。

 決して変えられない運命。

 人は戦う。

 例え相手が同胞であっても、竜であっても。

 そして世界の意志であっても。







 アリーザは廻る地球儀を鷲掴みにして止める。

 「私はそうは思わないわ。竜の意志が世界の総意なら、私が変えてみせる。人も、竜も、世界も」

 再び地球儀を回転させる。

 延々と廻る地球儀をただ、じっと見つめていた。