複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.62 )
日時: 2014/04/06 14:32
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: QNX5neil)

 陸戦要塞シェンロン。

 地上で駆動する移動拠点では、もっとも巨大で砂潜艦ヨルムガントを優に超すほどの長大な艦体である。


 シェンロン艦長室。

 全体的に中華装飾で統一された室内で終始にこやかな女性がセツナと対面していた。

 「ようこそ〜、セツナちゃ〜ん。眼が覚めたのね〜、お話はミヅキちゃんから聞いてるわ〜。私はシェンロン艦長のエウロペア・アイーシャル・クーディ。アイシャって呼んでね〜」

 間延びした声で自己紹介するハニーブロンドの美女。スイカでも入ってるんじゃないのかという程の豊満なバストを揺らしてセツナをその谷間に埋めてハグする。

 「嗚呼〜、可愛い〜。ミヅキちゃんも小さい頃は可愛かったわ〜」

 「・・・苦しい」

 それを呆れた風に見ていたシャオが声をかける。

 「それぐらいにしておけ、エウロペア。大事な客人を窒息死させるでないぞ」

 シャオの言葉に名残惜しそうに身体を話すエウロペア。

 「もう〜、アイシャって呼んでって昔から言ってるのに〜。メイちゃんは相変わらずね〜」

 不満そうにしつつも親しげに言う。


 「・・・セツナ・アオイです。バハムートでドラグーンパイロットを務めています。・・・それで、わたしは何故、この艦に居るのでしょうか?」

 セツナは目覚めてから、ずっと疑問に思っていた事を告げた。

 幼女は一歩前に出てセツナと対峙する。

 「儂の名はシャオ・メイメイ。シェンロンの竜機乗りじゃ。噂ぐらいは知っておろう?お主には儂のもとで鍛錬を積んで貰う。ドラグーン乗りとして正しき力の使い方を学ぶためじゃ。・・・心当たりはあるじゃろう?」

 シャオが鋭い視線でセツナを射抜く。

 「!」

 その視線に心を見透かされたような気がしたセツナは口籠る。




 激昂のまま暴虐の限りを尽くした蒼の竜機。

 それは自分だ。

 怒りと憎しみに我を忘れ、力だけを求めた結果。

 ワイバーンは自分の望みをただ、叶えただけ。


 「・・・分かっておるようじゃな。力を持つという事は、それだけ責任が伴うのじゃ。確かに世を生き抜くには力は必要じゃが、力だけを求心すれば、いずれ己が身も、そして周りも、力に滅ぼされるじゃろう」

 シャオは俯くセツナの頭を、その小さな身体を背伸びさせ、撫でる。
 
 「・・・お主を救ってくれた者に感謝するが良いぞ。己の命もかえりみず、手を差し伸べたのだからな・・・」

 ハッとして顔を上げ、シャオを見るセツナ。

 



 暗闇から差し込む光。

 暖かな温もり。

 ずっと昔に感じていた大切なもの。

 それは今でも変わらなかった。

 変わらずにいてくれた。

 護られていた。

 守ってくれていた。




 あれは・・・。







 あの人は・・・。

 









 

 セツナの頬を一粒の、暖かな滴が撫でた。