複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.65 )
日時: 2014/04/07 18:05
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: XLYzVf2W)

 荒野に響き渡る重厚な金属音。

 打ち鳴らされる打撃と斬突。

 大地を駆け巡り、二機のドラグーンが拳と剣を交わしていた。

 「はああああああっ!!!!」

 セツナのワイバーンが長剣を振るう。

 「甘い!踏む込みが浅いぞ!!セツナよ!!!」

 シャオのヴァリトラが素早く躱し、すかさず拳を打ち込み反撃する。


 
 それを見守りながら、周辺を警戒する二機のドラグーン。

 フェンのショクインとルウミンのペクヨンが竜種の接近に備えていた。

 
 セツナたちはここ数日、日課となった鍛錬を行っていた。

 

 しばらく立ち回りが続き、休憩のため、一時中断した。ドラグーンから降りてルウミンが用意した飲茶でみんなでお昼にする。

 プロ級の腕を持つルウミンの中華料理に舌鼓を打ちつつ、会話する。

 「セツナよ、お主の持ち味は剣による白兵戦じゃ。じゃが拳や蹴りとて馬鹿になるものではない。・・・ここ数日お主と手合せして気になったのだが妙に動きに勢いが欠けておるようじゃが・・・?」

 肉まんを頬張りつつ、シャオが問う。

 「・・・ワイバーンの出力が高すぎて、細かな調整が上手くいかない。今までは、そんな事なかったのに・・・」

 セツナは変質したワイバーンのパワーを制御しきれていなかった。機体全体から湧き上がる力は感じるのだが、上手く汲み取る事ができなかった。

 大きすぎる力に完全に翻弄されてしまっていたのだ。

 「ふむ・・・。抑制された力か。少し荒療治が必要かもしれんな」

 シャオは目を細め、セツナの中の何かを見極めるように見つめ呟いた。


 「セツナさん!もっといっぱい食べないからだよ!!全然減ってないもん!腹が減っては戦は出来ないって、日本でも言うでしょ?小食すぎるのもいけないとアタシは思う!!」

 ルウミンが大量の料理をセツナの前に置く。

 「・・・もう、お腹いっぱい。・・・許して、ルウミン」

 「ルウミン、午後も修行するんだから、そんなに食べたら苦しくて動けなくなっちゃうよ?僕も食べるの手伝うから、セツナさん」

 フェンが助け船を出す。

 「・・・ありがとう、フェン」

 困った様に、だが楽しそうに少し顔が綻ぶセツナ。






 
 少しずつセツナの心が変化しつつあるように、世界の流れも変わりつつあった。





























 アラスカ北極圏。

 
 視界を埋め尽くし吹き荒ぶ豪雪、氷の大地。



 何者かの一団が忙しなく作業を繰り返す。

 巨大な氷塊を削り出している様だ。


 氷塊の中には、なにかが氷漬けで閉じ込めれられている。

 一団は黙々とそれを削る。


 吹雪の嵐がまるで鳴き声の様に聞こえる。


 不安な、不穏な雰囲気を増長するように。

 それはゆっくりと、だが確実に侵食していった。