複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.69 )
日時: 2014/04/08 17:01
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: PqmNCYUu)

 立ちはだかるワイバーン。

 相対する三機のドラグーン。

 (・・・セツナ。此処までなのか?このままでは、儂はお前を殺さねばならない。それだけは絶対に・・・)

 シャオは心の中でシズクとの約束を思い出す。

 導くと約束した。
 
 未来を担うべき、この少女を守ると。

 その少女の命運を奪い去ってしまうのか。

 シャオは苦悶の表情をする。

 その時、ヴァリトラのモニターへシェンロンからの連絡が通電された。

 「こんな時に・・・。どうした、何があった」

 顔色が変わるシャオ。

 そして、背後のフェンとルウミンに話す。

 「・・・フェン、ルウミン。急いでシェンロンへ戻るのじゃ。原竜種が出現した」

 「原竜種が!?」

 「そんな!!でも師匠は!?」


 シャオは静かに言う。

 「ここは儂に任せておくのじゃ。お主たちはシェンロンへ向かえ。これは師としての命令じゃ。異論は認めん」

 有無を言わさぬ気負いにたじろぐ二人。

 「・・・わかりました、老師。竜種討伐に向かいます」

 「師匠、セツナさんをお願い。ふたりとも無事に帰ってきてね・・・?」

 二機のドラグーンは名残惜しそうに地上に降下していった。












 「・・・さて、儂はやるべきことをやらねばのう。最後まで付き合うぞ、セツナよ」

 シャオはコックピットで対面するワイバーンに毅然と微笑んだ。
























 陸戦要塞シェンロン。

 無数の竜種が艦隊に纏わりつき、破壊を繰り返す。

 シェンロンの巨大な艦砲が幾門も開き、轟音を響かせ竜種を撃ち落す。

 量産型ドラグーンが無数の竜種を相手取り、撃退しているが余りにも数が多い。

 被弾状態が目に見えて分かるほど、状況は切迫していた。

 艦体の装甲を食い破ろうとする竜種。

 それを阻止しようとドラグーン候補生たちが追いすがるが、竜種の群れが行く手を塞ぐ。


 艦に侵入しようとする竜種。

 その頭を光の矢が貫き、消滅させた。

 「させない!!僕たちの大事な船をお前たちの好きにはさせない!!!光弓無尽烈空破!!!!」

 上空から飛来したショクイン。

 かかげた長弓から光の矢を嵐雨の様に降らせ、竜種の群れを撃墜していく。


 「セツナさんも自分自身と戦っている!それに師匠も!アタシも戦う!!竜種なんかに絶対に負けない!!乾坤活殺蛇咬撃!!!!」

 地上擦れ擦れを滑空するペクヨン。

 構えた根が無数に分割され、鎖に繋がれた多節根となり、周囲の竜種を巻き込みながら回転し殲滅する。

 

 蔓延る竜種の軍団を猛勢に押し返すフェンとルウミン。

 このまま押し切れるかと思ったとき、けたたましい巨竜の激哮が鳴り響く。


 荒野を巨大な脚で踏み砕き、こちらに向かって猛進するティラノサウルスのような原竜種。いままでの中でも群を抜いて巨大だった。

 眼前の竜種を弾き潰しながら凄まじい速度で迫り来る醜悪な魔竜。

 猛烈な勢いのままシェンロンに突貫するつもりなのか。

 フェンとルウミンはすぐさま原竜種の元に向かい、攻撃を繰り返すが御山の様な巨躯と頑強な鱗鎧にはほとんど効いていない。


 このままではシェンロンが、多くの人々が、自分たちの帰るべき場所が失われてしまう。

 シャオやセツナに逢わせる顔がない。

 必死に足止めしようと無我夢中に攻撃する二人。

 飛び回る羽虫を払うように長大な尾を振るい、迎撃する原竜種。

 艦体からの砲弾の嵐。

 それでも巨竜の激進は止まらない、止まらないのだ。


 「やめろっ!!!やめろっ!!!!止まれっ!!!!止まれよおおおおおおっ!!!!!」

 「嫌、駄目、駄目・・・!!!!や、やめてえええええええっ!!!!!!」



 巨竜が勝ちどきの声をあげるように咆哮し、シェンロンの艦隊にその巨躯をめり込ませようと、絶望を味わわせてやろうとした瞬間、









 流星のごとき蒼さの竜機が直撃し、その巨躯を吹き飛ばした。