複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.70 )
- 日時: 2014/04/08 23:22
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: FTPBoNWE)
シェンロンの艦体に原竜種が激突する寸前、蒼い竜機が流星の速さで特攻し、その巨大な身体を弾き飛ばした。
砂塵と轟音を上げて、転がり倒れる原竜種。
そこには蒼い暴竜が悠然と原竜種の眼前で飛翔していた。
場が一気に緊張する。
何故、ここに。
原竜種を新たな獲物として喰らいに来たのか。
シャオはどうした。
まさか。
フェンとルウミンは最悪の事態を想像した。
「・・・コイツはわたしが相手をする。フェンとルウミンは艦を襲う竜種をお願い」
それは、ハッキリとしたセツナ本人の声だった。
「セ、セツナさん・・・」
「ほ、本物・・・?」
ふたりは我を忘れたように驚愕した。
「・・・もう大丈夫、もう見失わない。わたしはここにいる。だから、ここは任せてほしい」
ワイバーンはふたりを見つめる。
そこには先程戦った恐ろしい怒気も殺気も微塵も感じられず、自信と確信が満ち溢れていた。
フェンとルウミンはそれだけでセツナが己の限界を超え、あるべき姿に辿り着いたと理解した。
「おーい、セツナ!忘れものじゃぞ!!」
遠方から幼女の良く通る声が木霊する。
ヴァリトラが何か巨大な物を勢いよく投げて寄越した。
それをしっかりと受け取り、鋭い切っ先を振りかざすワイバーン。
愛刀、飛龍剣だ。
「シャオ先生、ありがとうございます」
「なに、気にするな。こちらは儂らに任せよ。お主は存分に暴れてこい。フェン、ルウミン、何をボサッとしておる!竜種はまだまだ、おるのじゃ。気合いをいれていかんかい!!」
シャオの気合いの言葉に頷くフェンとルウミン。
「はい!シャオ老師!!」
「うん!師匠!!」
三機のドラグーンは今だ艦体を襲撃する竜種の群れに飛び込んでいった。
原竜種が巨体を揺らし、起き上がる。
起き上がり様に巨尾を鞭のごとくしならせ、ワイバーンを攻撃するが、それを躱すことなく拳で弾き返す。
返しざまに尾を掴むと、勢いよく巨体を投げ飛ばした。彼方に吹き飛び、地響きを上げて地面に沈む巨竜。
「・・・怒りや憎しみは確かに強い力を持つ。だけど、わたしはそんなものいらない。本当の強さがここにあるから」
ワイバーンの機体が蒼く、淡く、輝きだした。
頭部の禍々しい角は一本の巨角になり、勇猛さと猛々しさで天にそびえ立つ。
歪で鋭かった竜翼は洗練され、雄々しく、逞しい巨翼へと羽ばたき、機体の各所の禍々しい鋭角な刃の装甲が滑らかな外装に変わる。
雄大かつ柔軟な四肢に覇気を漲らせ、神々しい蒼穹の外骨格を鎧のごとく纏うその姿は伝説より現れた竜の騎士を思わせる。
「ワイバーン、わたしとあなたは共にひとつ。これからもあなたの力を貸してほしい」
ワイバーンの瞳に強い意志の光が宿り、右手に携えた長剣を天高くかかげる。
長剣は光輝き、その形状を目まぐるしく変化、変質させる。
それはとても長く、とても大きな両極の対なる巨剣。
蒼く、何処までも蒼く美しく透き通る森羅万象の無形たる刃。
「飛龍蒼剣・零式」
投げ飛ばされた原竜種が怒りの咆哮を上げて、突進する。
大地を揺らし、憤然とせまる巨躯。
ワイバーンは両極の蒼剣をゆるかに、しかし力強く振り上げ、
「真・飛龍流星剣・斬」
そして斬り下ろした。
蒼く透き通る長大な刀身。
そこからその輝きと同じ、蒼光の閃刃が幻想の煌めきと共に放たれた。
虚空に流麗な残光の軌跡が描かれる。
流星の迅さで竜種の巨魁を縦に割り、一刀のもとに両断した。