複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.71 )
日時: 2014/04/15 17:20
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: F2lwV46U)

 
 
 シェンロンの乗員、コロニーに住む人々。

 竜種と戦うドラグーンのパイロットたち。

 その竜種たち。


 目撃したのだ。

 
 蒼。


 それは竜の騎士。


 あたかも物語の世界に住まう神々の伝説の存在。



 「・・・真のドラグーン・・・。セツナ、やはりお主は・・・」

 シャオは戦いの手を止めた、いや、彼女だけではない。

 この場のすべての者たちが戦いを放棄し、魅入ってしまったのだ。

 竜種さえも。







 原竜種は、その巨躯を裂かれ大地に還った。

 
 蒼黎の竜騎士が長大な両極の蒼刃をかかげ、陽光を切り取り、艦隊に纏わりつく竜種を見やった。

 微動だにしなかった竜種たちが思い出した様に動き出し、一斉にワイバーンのもとに翼を向けた。

 事態にようやく反応し、戸惑うドラグーンたち。戦っていたすべての竜種が蒼い竜機へと向かって行ってしまった。

 上空を埋め尽くす竜種の塊。

 それ事態がひとつの生き物のように蠢き、ワイバーンに牙を剥き、襲い掛かる。

 振るわれる両極剣。

 次々と蒼い斬撃が塊を薙で削ぎり、まるで灯に燈る蟲のごとく、吸い寄せられるように竜種の群れを瞬く間に消滅させた。
 
 
 竜を駆り、そして竜を狩る。
 



 ワイバーンは竜種を殲滅させた後、皆が待つ、大地にその羽を降ろした。


 勇英に様変わりした蒼い竜機から降りるセツナ。

 

 真っ先にルウミンが抱き着き、盛大に泣き出す。

 フェンも無事を喜び、感謝の涙を流す。

 困った視線を向けるセツナにシャオは頷く。






 空中での戦いでシャオたちと戦ったセツナ。意識はあった。だが、コントロールが出来なかった。

 大切な人たちを苦しませてしまう自分に怒り、嘆き、恐怖し、そして諦めが覆う。


 そんな自分に自問自答をする。

 本当にこれでいいのかと。

 何も見ずに聞かずに己の殻に閉じこもってしまいそうな心。

 それはとても楽な選択だろう。

 だが、それは違う。

 そんなのは自分自身が許さない。

 心の片隅の淡い光。

 迎え入れてくれた人々。

 みんなの想いが支え、呼び覚ました。











 自分も支えたいと、救いたいと想った。










 今もどこかで戦っているあの人を。

 
 











 セツナは蒼く澄んだ果てない空を見上げた。