複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.72 )
- 日時: 2014/04/15 17:22
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: F2lwV46U)
Act.8 黄昏、追憶の彼方
イギリス大英帝国領。
エリーゼル・ヴァン・ハイムは愛機のドラグーン、ペンドラゴンでかつての故郷があったであろう海域を飛翔していた。
一面真っ青な海原だが、かつては巨大な国家が存在、君臨していた。
巨大な都市群と多種な民族が入り交じり、風光明媚な古都を残しつつも最先端を誇る故国であったが一夜にして大陸は深い海の底に沈んでしまった。
「・・・確か、この辺りだと思いますわ」
ペンドラゴンを旋回させ、海上の一か所にホバリングする。
データベースから位置を確認すると、すかさず紅の機体で海に飛び込むエリーゼル。
あまり時間は掛けられない。
バハムートの防衛もしなければならないから。今はパイロットがひとり別艦に移籍しているのだ。
先日、いつもの定期報告で彼女、セツナ・アオイと会話したのだが、見違えるように変わっていた。
外見ではなく中身だ。相変わらず、寡黙で無愛想だが、内に秘めた力が大きく変化していたのが分かった。
内面から溢れる自身に満ちた輝き。以前のいつ爆発してもおかしくない様な不安定さが消えていた。
見つけたのだろう、自分の在るべき道を。
エリーゼルはモニター越しに映るセツナとシェンロンの者たちの姿を思い出し、自嘲気味に笑った。
自分は前に進めているのだろうか。
すべてから逃げ出してしまった己を。
青い海域はやがて光が届かない深海へと変わる。
暗い海中を紅の竜機が潜行する。
海はもっとも危険な区域だ。
魔の領域である。
現在、大陸は地球規模の地殻変動により、大きくその地図の改変を余儀なくされた。
以前存在した国は亡び、ある大陸は沈み、別の場所では未知の大陸が浮上していた。
まるで地球が原初の刻に戻ったかのように。
それも竜種が引き起こしたのものなのか。
あるいは世界そのものが在るべき姿に孵ろうとしているのか。
「見えてきましたわ、あれが。・・・変わりませんわね。あの時のまま・・・」
ペンドラゴンが海底に沈む都市群を発見し、より深く潜ろうと機体を潜行させた瞬間、
巨大な何かが暗き砂底を這いずり、その触手を伸ばして襲い掛かってきた。