複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.73 )
日時: 2014/04/09 18:17
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: iEydDqYB)


 機体を覆うように猛スピードで迫る物体。

 「!? これは!!」

 何本もの醜い触肢をうねらせ、絡め取ろうする巨大な海棲生物。

 蛸のような烏賊のような、何とも言えない不気味で悍ましい姿をしていた。

 その姿は船乗りの伝説に登場する海の魔物クラーケンを思わせる。


 これも竜種なのか?

 エリ−ゼルはそう思いながら迎撃するべく、ペンドラゴンのライフルを構える。

 が、

 背後から無数の触肢が機体に捲き付いて来た。

 「しまった!!もう一匹潜んでいたんですの!?」

 強力な吸盤で吸い付き、万力のごとく機体を締め上げる蛸のような竜種。

 メキメキと機体が悲鳴をあげる。

 「ああっ、もう!!わたくしはニュルニュルした軟体生物が大嫌いですわ!!!」

 ペンドラゴンがビームで触手を撃ち抜き、拘束から逃れる。

 しつこく捲き付こうとする竜種どもの柔らかそうな頭をビームで穿ちながらライフルを腰だめに掃射し、迫る軟体怪物をまとめて焼き尽くし海底に沈める。



 骸が沈む深海の暗闇に光る無数の裸眼。

 所狭しと蠢く竜種の群れが獲物を求め、浮上してきた。

 「・・・なんて数ですの。身の毛がよだつとはまさにこういう事ですわ・・・」

 心底嫌そうに、顔をしかめるエリーゼル。

 そしてすぐに全速で海上に浮上した。





 水面から高速で飛び出し、空中に舞い上がる。つられて海面に現れるおびただしい数の薄気味悪い毒々しい体表の竜種。




 ペンドラゴンは踵を返し、空中で停止する。

 太陽を背に。

 「メインジェネレーター出力全開。『バスターモード』起動。パネライザー展開。エネルギーチャージ開始」

 背部の幾つものファンネルが大きく展開し、降り注ぐ陽光を取り込み輝きだす。

 ライフルが拡張、変化してより長大な形状になる。

 コックピットのエリーゼルにスナイプスカウターが装着され、専用のコントロールトリガーガンが出現し、握り込む。

 モニターの照準を無数の竜種に確定する。

 背部のパネライザーが太陽からの光を取り込み、花弁のような巨大な煌めく燐光の羽根を形成する。


 「エネルギーチャージ完了。ターゲット補足。狙い撃ちますわ」



 トリガーが引かれる。



 「ドラゴニックバスターブラスト照射!!!!」 




 ライフルから極大の閃光の帳が降り注ぎ、海原を貫く。

 光の奔流が海面を割り、モーゼの十戒さながら横断し、並み居る海洋竜種の束は瞬時に蒸発、分解され大海の露へと変えた。
 


 凄まじい波動の余波で断たれた海面が電気分解を起こし、放電を発生させている。










 コックピットでエリーゼルが軽く息をつき、一掃された海を視る。

 
 「・・・はあ、これで少しは海の中も過ごし易くなったでしょう」







 分割された海原が再び本来の姿を取り戻し、押しては返す波のさざめきが聞こえた。