複雑・ファジー小説
- Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.74 )
- 日時: 2014/04/10 14:04
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: frKstor9)
深海に眠る広大な都市。
そびえる建造物群が繁栄を極めた人類の証として、墓標のごとく沈黙を保つ。
その中央、ドーム状の研究施設。
紅の竜機が格納シェルター入口に降り立つとまるで向かい入れる様に、重厚な隔壁がせり上がる。
「・・・まだ機能していますの?中枢は破壊された筈では・・・」
施設に侵入すると幾重にも隔壁が閉まり海水を排出する。
ペンドラゴンが閉ざす暗闇の中、格納庫と思われる場所に足を踏み入れ、辺りを見渡す。途端に煌々と眩しい照明が照らし出す。
コックピットでパネルを操作するエリーゼル。
「・・・酸素、海圧、汚染濃度異常なし、ともに良好。やはり生きていますわ、この施設。さすがエキドナの技術、並みではないと言ったところですわね」
機体のハッチを開き、操縦席から身を乗り出す。
澄んだ浄化された空気に目を閉じ、身を委ねるエリーゼル。
「・・・懐かしい、この感じ。『今まで』のわたくしも同じく感じていたもの・・・」
数瞬、余韻に浸っていたが、すぐに気を引き締めた顔になりドラグーンから降りると施設内の奥へと歩みを進めた。
はるか上空、襲い来る竜種を蹴散らす骨太な黄のドラグーン。
群がる異形をアームガトリングを撃ちつつ破砕し、巨大な豪腕を瞬時にキャノン砲に変形させる。
「ヴァイパー・キャノン!!!」
轟砲の爆音が耳をつんざき響き、竜種の躰を爆砕する。
続けざまに両大腿外装部が展開し、巨大なミサイルがズラリと軒を並べる。
「ファランクス・ボアー・ミサイル!!!」
次々と発射、撃ち上げられる弾頭。
青空を爆撃の閃光が包み、衝撃が空の襲撃者を纏めて木端微塵に肉片に変える。
明黄のドラグーン、ヒュドラを駆る少女、マリアは同じ艦のパイロットの少女エリーゼルの事を考えた。
いつも飄々として理知的に振る舞う彼女が、心此処に在らずな感じで何か物思いに耽っているのを目撃した。
シェンロンで活動中のセツナをモニターで見てから、どこか思いつめた様な雰囲気を感じとったマリアは声をかけてみたが、いつもの人形みたいな笑顔ではぐらかされた。
飾られた人形の、時を経ても変わることのない美しい微笑み。
自分を偽り、閉じ込め押し隠す仮面。
マリアは気付いていたが、あえて知らないふりをした。無理矢理聞いて嫌われたくは無いと思い、またそんな自分を卑下し悔んだ。
少しして、バハムートが欧州付近に航行するとエリーゼルはひとりドラグーンに乗り込んで行ってしまった。
皆、心になにかしら影を背負っている。
そして戦っている。
まだ自らの中の闇とて拭いきれていない。
マリアは胸に手を置き、半身の少女に問いかける。
いつの日か償わなわねばならない。
己の罪を。