複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.76 )
日時: 2014/04/11 12:41
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 9jf1ANEm)

 陸戦要塞シェンロン甲板。

 発着場に一機の蒼いドラグーンと四人の少女。


 「・・・いよいよお別れか、セツナよ。長い様で短かったな、お主と過ごす日々は。寂しくなるのう・・・」

 シャオが名残惜しそうにセツナに話す。

 「どうじゃ?このままシェンロンに転属というのは。ミヅキに口添えしてやるぞ?」

 シャオの誘いに少し困った様に、しかしハッキリと告げるセツナ。

 「・・・ありがとう。でも、わたしはバハムートのドラグーンパイロットだから。皆が待っているから、その誘いは遠慮しとく」


 「はははっ!冗談じゃ!さしものミヅキもエースをそう簡単に手放さんじゃろうて」

 シャオは可愛らしい声で笑う。


 「・・・ううっ、セツナさん。もう少し居てもいいんだよ?美味しいもの、いっぱい作るから・・・!」

 ルウミンが泣き、鼻を啜る。

 「ルウミン、泣かないって自分で言ったのに・・・。ほら、セツナさんが困ってるよ?笑顔で見送りしようよ」

 フェンがルウミンの肩を抱く。

 
 「・・・フェン、ルウミン。今までありがとう、とても感謝してる。こんなわたしに優しくしてくれて・・・。またシェンロンに来るから、その時は改めてよろしく」

 セツナがふたりと握手をする。

 「・・・うん、約束だよ、セツナさん!アタシ、とびきりの御馳走、用意するからね!!」

 「僕は、また手合せしたいな。君といればもっと自分を高められる気がするよ」

 ルウミンとフェンが微笑む。



 セツナはシャオに向き直る。

 「先生、お世話になりました。・・・本当に、わたしなんかのために・・・。先生がいなければ、わたしは・・・」

 俯くセツナにシャオは優しく言う。

 「セツナよ、儂は大したことはしておらん。すべてはお主自身が壁を乗り越えた結果じゃ。儂はその切っ掛けを与えたに過ぎん。・・・お主の力じゃ・・・」

 「シャオ先生・・・」

 シャオは咳払いをしてワイバーンを視る。

 「あ〜、儂なりに、ちと考えたんじゃがお主の竜機も大分様変わりしたからのう。・・・新しい名前を思いついたのじゃ」

 セツナは不思議そうにする。

 「・・・新しい名前?ワイバーンの?」

 「そうじゃ、名前じゃ。まあ、儂からの免許皆伝みたいなもんじゃと思ってくれ。気に入らなければ無視して構わん」




 そしてシャオは一呼吸於いて、宣言する。







 「その名も、『ワイバーンD.R』じゃ!!!!!」










 静かになる甲板。

 ドヤ顔のシャオ。

 「・・・D.R?」

 首を傾げ、シャオを見て、ワイバーンを見て、またシャオに視線を戻すセツナ。

 「・・・師匠、ただ単に後ろにアルファベット付けただけじゃない・・・?」

 「シャオ老師のネーミングセンスって微妙なとこ、あるよね」

 ふたりの台詞に顔を真っ赤にするシャオ。

 「う、うるさい!べ、別にいいじゃろう、カッコイイんじゃし!!それにD.Rには色々意味があるんじゃ!!伝説の竜騎士とか大いなるドラゴンとか!!!」

 「・・・カッコイイ」

 「「「えっ?」」」



 セツナが蒼い竜機、いや龍騎を見上げポツリと呟く。


 「・・・これからも一緒に戦おう、ワイバーンD.R」




 陽光に照らされ、悠然とそびえ立つ蒼黎の竜騎士。


 その瞳には強い意志の光が輝いていた。