複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.77 )
日時: 2014/04/14 15:02
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: hRfhS.m/)

 白い世界に飛翔し合う二機の赤い竜機。

 紅の機体を翻し、ライフルを構え上空から閃光の雨を降らせるドラグーン。

 鮮血の機体を駆り、縦横無尽に攻撃を躱しつつビームを連射するドラグーン。

 互いを追いかける互いのフェンネルのユニット。


 二体のペンドラゴンが目にも止まらぬ迅さで白簿の空間を舐め尽くす。

 まるで鏡合わせの様に互いに同じ動きを繰り返す。

 膠着している。

 決着がつかない。
 
 「・・・ならば、一気にケリをつきますわ!!」

 空高く飛翔する紅のドラグーンがライフルを構えると背部のパネライザーが大きく展開しエネルギーを充填する。

 下方の鮮血のドラグーンもライフルを構え、背中のパネライザーを展開させる。

 「くっ!? 猿真似もいい加減にするがいいですわ・・・!!本物の格の違いを教えて差し上げます!!!ドラゴニックバスターブラスト!!!!」

 そして双方同時から蓄積された膨大なエネルギーの波動が衝突する。

 ぶつかり合う閃光が白い世界を覆う。

 








 白い何もない空間に漂う。

 エリーゼルの目の前に鏡があり、自分が映る。

 その自分は酷く暗い顔をしてこちらを睨む。

 瞬時に殺気が溢れかえる、それに釣られるように互いにホルスターから銃を取り出し頭に突き付ける。

 睨み合う二人。

 今にでも引き金を引きそうだ。

 互いの瞳に映る姿。

 エリーゼルは理解した。

 これは己だ。

 自分自身だ。

 自分の中の闇。

 今まで目を背けてきた心の深淵。

 エリーゼルはそっと銃を降ろし、もうひとりの己を抱きしめる。

 「ごめんなさい。ずっと見ないふりをしてきて・・・。全部あなたに押し付けてしまいましたわ。あなたもわたくしなのに・・・」

 抱きしめた自分から伝わる温もり。

 光も闇も表裏一体。

 どちらも欠けては存在できない。

 必要なのだ。












 目を開けるエリ−ゼル。

 白い砂浜に倒れている。

 周りには幼い少女たちが心配そうに見ている。

 
 「起きて、エリー。あなたはまだ此処に来ちゃ駄目。だってあなたはまだ生きてるもの。生きている、人形なんかじゃない」


 エリーゼルの手をそっと取り、優しく微笑む。

 「生きる事は辛い。苦しい。悲しい。でも、楽しいこともある。わたしたちは皆死んじゃったけど、生きて良かったと思ってる。・・・あなたもそうでしょう?」

 エリーゼルは少女を見上げる。

 そうだ。楽しい。毎日を生きるのが。お喋りも食事も買い物もお風呂も。そして何より、共に歩む仲間がいる。

 

 生きるということは、楽しいのだ。

 苦しみも悲しみも生きている証。

 暗闇を照らす光。

 だが、眩しすぎては闇さえも覆い隠してしまう。

 己の中の闇さえも。

 すべてを受け入れる。

 それが生きるという事。




 「・・・わたくし帰りますわ。皆が待つ場所に」

 手を繋ぐ少女に微笑みかける。

 少女も微笑み、周りの少女も微笑む。

 そして白い世界が急速にぼやけていった。




 「・・・また逢う日まで。バイバイ、エリー」



 











 ペンドラゴンのコックピット。

 エリーゼルは目を覚ました。

 格納庫だ。


 ジッと手を見つめた後、ペンドラゴンを起動させる。


 隔壁を開き、暗い海へと機体を漂わせる。

 
 振り替える事無く海底に眠る都市を後にし、海上を目指す。

 

 

 いずれ自分も逝くだろう、白簿の世界。

 だが、今はまだその時ではない。

 エリーゼルは手に残る幼い少女の温もりを確かめるように、そっと握った。