複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.79 )
日時: 2014/04/11 21:30
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: .7JOKgnc)


 何本もの巨大で不気味な蛇のアームをくねらせ、歪な曲刀を振りかざす異形のドラグーン、ティアマト・アプスー。

 
 セツナは蛇の怪物のような竜機に臆すことなく、言い放つ。

 「・・・どうしても戦うと言うなら相手するまで」


 眼前にワイバーンの手を翳す。

 蒼い輝きと共に出現する巨大な金属結晶板。

 それを掴むと折り畳まれた蒼刃が展開され、瞬時に超大型の両極対刃の長剣となる。

 「飛龍蒼剣・零式」

 蒼い残光を描き、両極剣を構えるワイバーンD.R。



 「さあさあさあっ!!貴様の力を見せてみろ!!私がすべて喰らってやるっ!!!」
 

 双刀を振りかざし、猛スピードで斬り込む複蛇の竜機。

 それを躱さず、正面から両極剣で受ける蒼の竜騎士。

 火花を走らせ、鍔迫り合いする両者。

 「喰らいつけ!!サーペントワーム!!!」

 ティアマトの蛇の触首が鋭い牙を剥き、一斉にワイバーンに襲い掛かる。

 
 「させない」


 煌めき、虚空に弧を描く蒼い剣閃。


 複数の大蛇のアームがその首を一気に断たれ、宙に散る。

 同時にティアマトの機体に幾つもの斬撃の亀裂が走り、衝撃で後方に吹き飛んだがすぐに体勢を直す。


 「くくくっ、強い、強いな、セツナ・アオイ。感じるぞ、貴様の力を!貴様のドラグーンの猛るエネルギーを!!もっと、もっと感じさせろ!!!」

 ティアマトの断たれたアームの断面が盛り上がり、再び頭部を形成、次々と修復し牙を覗かせる。

 機体の装甲から機械の触手がうねり出て斬痕を覆うと、瞬く間に復元した。



 「・・・これは?機体の暴走?でも、この感じは違う・・・」

 コックピットからティアマトの脅威の再生力を目撃したセツナは己に起きた現象と重ね合わせるが、それよりも嫌な感覚が背筋を通り抜けた。



 「ふふっ、驚いてるようだな。何も貴様だけが特別な訳ではない。私も手に入れたのだ、そして至った。・・・『ドラグ・バーラー』をな・・・!!!」

 ミカエラの言葉に合わせ、複数のサーペントワームが一斉に邪悪な口腔を開くと禍々しい黒い光が集束、集積されていく。


 「!?」

 セツナがとっさに両極剣を前方に押し出し、防御姿勢を取った瞬間、

 

 「砕け散れっ!!!アビス・ダークストリーム!!!!」

 空が一瞬黒く明滅し、暗黒の閃光が解き放たれワイバーンの構えた両極剣に直撃する。


 「ぐううううっっっっ!!?」

 すべてを喰らい貪り、塗り潰そうと闇の波動が延々と押し寄せる。

 両極剣から受け止めきれない黒光が機体を抉り、掠める。

 大空を暗黒の残光が包み、闇が照らす。


 「はははははははっ!!!いつまで持ちこたえられる!?もっと、もっとだ!!苦しめ、足掻け、無様な姿を晒せ!!!弱者は強者にひれ伏せ!!!私の力が貴様より優秀なのだ!!!!」


 ミカエラが興奮し、狂ったように笑う。



 「・・・かわいそう。あなた、前のわたしみたい」

 セツナは憐みの眼でミカエラを視る。






 「なに・・・!?」



 ワイバーンが前傾姿勢になり力を込めると、徐々に黒い波動は押し返される。







 そして、






 「真・飛龍流星剣・斬」








 蒼く輝く両極剣の刃。








 横一閃に繰り出され、大きく薙ぎ払われる。









 天空を満たす蒼穹の照光。










 闇夜の帳は斬り裂かれ、空の青さへと霧散された。