複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.82 )
日時: 2014/04/12 18:48
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 7lLc0QEy)

 
 空中戦艦バハムート艦長室。


 「・・・それじゃ〜セツナちゃんによろしく言ってね〜、ミヅキちゃん」

 モニター画面にシェンロン艦長のエウロペアが映し出されてミヅキと通信している。

 「ああ。分かってる、アイシャ。彼女は大切な仲間だからな。先生に礼を言っといてくれ。ではな」



 通信を切り、椅子にもたれ掛かるミヅキ。

 少女が無事、試練を乗り越えたことに安堵した。



 目を瞑り、遥か過去を思い出す。

 オペレーターとして、かつてのパイロットたちと共に過ごした十代の若輩の自分。

 たくさんの少女たちがその若き命を散らしてきたのを間近で見た。

 ある者は竜種細胞の適合失敗で、ある者はドラグーンの暴走で、またある者は竜種と対峙し帰らず・・・。

 様々な苦難を乗り越え、選ばれた僅かな少女たち。

 すべては平和のため。

 みんなが安心して暮らせる世界を取り戻すため。

 そう信じていた。

 そう信じて戦い、皆死んでいった。

 己は見守るしかなかった。

 自分には竜種細胞の適合率は皆無だった。

 傍らで支えるしかなかった。

 「・・・私は皆に報いる事が出来ているのだろうか・・・?」

 ミヅキは天井を仰ぎ見、呟いた。
 


















 


 バハムートドッグ内ドラグーン格納庫。

 ワイバーンD.Rが格納庫にて翼を休めている。



 「おかえりーっ!!セツナっち!!!心配してたんだよー!!!!」

 到着したセツナを出迎え、抱き着くマリア。

 「常に定期連絡のモニターで顔を合わせてましたが、いざ本人に逢うと嬉しさは倍増しますわね。・・・お帰りなさい、ミス・セツナ」

 エリーゼルが照れ臭そうに、髪を掻き上げる。

 彼女たちだけだではない。

 整備士、通信連絡員、ドラグーン候補生、その他たくさんの出迎える人々。

 皆、繋がっているのだ。

 己の心と。

 拒絶していたのは世界では無い。

 自分だったのだ。

 こんなにも世界は大きく広がっている。







 セツナは皆に暖かな眼差しを向ける。


 

 そして、柔らかに微笑む。






 「・・・ただいま、みんな」