複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.88 )
日時: 2014/04/14 11:40
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: hRfhS.m/)


 まるで罪人のように磔台に飾られたマリアは信じられないものに遭遇したかに驚愕と畏怖が織り交じった表情をした。


 「・・・お父、さ、ん・・・?」

 
 立体モニターで映し出された白衣の男はマリアに視線を向ける。

 すべてを凍て付かせるとても冷たい瞳で。

 「・・・マリア。久しぶりだな、暫らく見ないうちに随分大きくなった。お母さんの子供時代を思い出すよ」

 そう言って歩き、マリアの前まで来て立ち止まる。


 「・・・本当にお父さんなの?お父さんはあの時、事故で・・・」

 マリアは拘束されながら眼下の父らしき男に問いかける。

 「・・・ああ、もちろん私だ。ラーク・アースカードだ。もっとも正確にはデータ上にインストールされた補助AIが生前の私の知識をもとにバックアップ情報を構築したに過ぎないがね」

 淡々と語るラーク。

 「・・・あれは不慮の事故だった。疲れていたのだろう、私自身は。足を踏み外して転落死とは・・・。私のオリジナルにしては実にあっけない末路だ」

 手摺りの柵から、ドッグの下を覗く。


 「・・・お父さん、何でこんな事をするの?ヒュドラを操作してるのはお父さんでしょう?あのふたりは関係ないよ、解放して」

 マリアは悲しげに言う。

 「・・・ふむ、あの二機のドラグーンか。紅いのはデータベースには存在しない機構が組み込まれているな。・・・なるほど、蒼いのは例のコピーとやらか。しかしここまで精巧に構築するとは・・・。いや、興味はあるが無駄話はここまでにして本題に移ろうか」

 ラークは動く事が出来ない二体の竜機を興味深そうに観察した後、マリアを見上げる。

 「さあ、始めようマリア。あの時出来なかった続きだ。お前の『実験』のな」

 その言葉に恐怖に引き攣るマリア。

 「じ、実験?な、何の!?ヒュドラは起動に成功したのに!?これ以上あたしに何をするの!?嫌だよ!もう実験なんて嫌だよ!!お父さん!!!」

 暴れるマリア、だが抵抗は不可能に近い。

 そんなマリアを見てラークは訝しげに眉をひそめる。

 「うん?生前の私はお前に話していなかったのか?本当の研究内容を。ふむ、では掻い摘んで説明を・・・」


 「ラーク博士!!あなたは実の娘を何だと思ってらっしゃるのですか!!!最低です!!父親として恥ずべき行為です!!!」

 「・・・これは、竜種細胞を抑制する力が働いている?」

 エリーゼルとセツナがヒュドラに押さえ付けられながらも抵抗の意志を見せ、機体を動かし押し返そうとする。


 「・・・無駄だよ。施設内に散布されたナノマシンで君たちのドラグーンの運動制御を掌握させてもらった。私を誰だと思っている?竜種細胞、ドラグーンを創り上げたのは私だ。対抗策はいくらでもある。そこで大人しくしていたまえ」

 得意げに語るとラークは向き直り、マリアに話す。


 「・・・話がそれたな。マリア、この実験はお前の、『お前たち』の真の解放を目的としているのだ」