複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.9 )
日時: 2014/03/31 13:34
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: pYv9VleS)

 Act.2 君の蒼 空の青


 空中戦艦バハムート、全長7500m、全高700m、人類の空の移動基地であり、最前線の重要な拠点。巨大な艦体の中枢にはコロニー都市が形成されており、大地を追われた数万人の人々が身を寄せ合い生活をしている。

 バハムートは一部の人間たちの空への移住地であり、同クラスの艦体が世界に数隻、存在する。

 海を拠点とする巨大潜水艦『リヴァイアサン』、地上を拠点とする二つの機動要塞『ヨルムガント』、そして『シェンロン』があり、この四つの都市艦隊が人類にとっての最後の生息区域でもあった。

 それぞれにドラグーンが配備され、日夜、竜種との脅威と戦っている。



 バハムートブリッジ内。艦長ミヅキ・タチバナは、先程、報告を受けたドラグーンのパイロットの少女、セツナ・アオイについて考えていた。

 日に日に彼女の姉に似てきている、と。

 シズク・アオイ。

 かつての自分の部下であり、最前線で戦うドラグーンのエースパイロットだった。

 『だった』である。

 彼女は数年前、事故に遭い、その消息が途絶えたままだった。

 当時、彼女の部隊の直属の上司であった自分にも知らされていなかった新型試作機ドラグーンのテスト実験。その時、起こった何か、生存者、目撃者はゼロ。参加していた当時のドラグーン搭乗者の少女たち、皆すべて消えてしまった。

 上の対応は突然の竜種の襲撃とそれによる試作機の動作不良による事故として処理された。パイロットの捜索も早々に打ち切られ、実験に関わったであろう研究者も忽然と姿を消した。

 泣きじゃくる当時の幼いセツナを見て、憤りを感じ上司に問い詰めたが渋い顔で関わるなとだけ警告された。その後、自分なりに情報を集め、調べたがほとんどの痕跡が消されていて愕然とした。

 自分は何もしてやれなかった。

 何も知らずただ、彼女を見殺しにしてしまった。

 凛とした表情で受け答えする少女。明るく皆に好かれていた。戦闘では誰よりも前線に立ち、身を挺して戦う正義感溢れる姿。妹思いで、いつも楽しそうに話をしていた。


 今はその生死すら判らない。

 せめてもの罪滅ぼしにと天涯孤独となった幼い少女、セツナを引き取り、保護者として受けいれたが、彼女の心は死んでしまっていた。共に過ごしたのは僅かな間だったがその目には何も映していなかった。恨まれても仕方ない、と当時は思った。

 そして彼女の中の竜種に対する憎しみが大きく育ってしまった。

 それは皮肉にもドラグーンの適合者として覚醒してしまうほどに。

 それと同時に彼女に与えられた機体。

 ワイバーン。

 今までのドラグーンとは一線を画する機体。もともと竜種細胞を取り入れて造られるので生物然としているのは解るが、得体の知れない異様さを感じた。

 竜種細胞を己の体内に取り込み、適合率を高める少女たち。失敗すれば死のリスクが伴う。

 だがセツナはいとも容易く適合し、ワイバーンを起動させた。

 まるで最初からこうなる事が当然の様に。その時ミヅキは機動実験に立ち会っていたが、身震いしたのを覚えている。

 竜種を滅ぼすために選ばれた様な少女。



 ミヅキは在りしの日の笑いあう姉妹の姿を思い浮かべ、モニター越しに映る蒼い空を遠い目で眺めていた。