複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.90 )
日時: 2014/04/14 16:57
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: hRfhS.m/)

 「・・・解放?何を言ってるの、お父さん。わたしたちってもしかして、イリアの事?」

 拘束されたマリアが父ラーク、正確にはデータの立体画像に問う。

 「そうだ、お前の双子の妹イリアだ。ヒュドラのデータから解る。覚醒したのだな。・・・お前たちには辛い運命を背負わせてしまった。私も何とかしようと、融合してしまったお前たちを元に戻そうとしたが、うまくいかなかった。これほどまでに竜種細胞が厄介だと改めて気付かされた」

 ラークは少し間を開け、話す。

 「・・・ヒュドラはお前たちを引き合わせるための巨大な演算機器だ。だが、それも完全ではない。常に不安定な状態だ。それを修正しなくてはならない」

 「・・・お父さん、そのためにヒュドラを造ってたんだね。でももういいの。イリアはわたしの中にいるよ。もう実験しなくてもわたしたちは一緒にいることができるから・・・」

 マリアは父の本当の目的と深い愛情を知り、涙が流れた。

 葛藤したのだろう、憎みもしたろう、だがそれでも己の娘なのだ。

 たったひとりの家族なのだ。


 「ソう、不完全なノダ。完全ニしナくテハ、なラないぃイぃ」

 ラークの画像が乱れる。様子がおかしい。

 「お、お父さん!?」

 「耳mイ美m未完成は火赤赤アKん完全二インいにしなくては奈rな逢いあいい!!!!」

 画像が極端にブレ出し言葉がおかしくなる。


 「ミス・マリア!!それはあなたのお父様ではありません!!!ただのデータの羅列です!!!!」

 「・・・惑わされてはいけない!!!真実を見極めろ!!!!」

 ラークのデータ体が異常をきたしたからか、ヒュドラの力が弱まる。同時に機体の運動系回路が復活する。

 セツナとエリーゼルはすぐさま愛機を稼働させ、ヒュドラを押し返し磔にされたマリアを介抱しようと機体の手を伸ばす。

 「砂サ亜させセルかあああああ亜あッ!!!!」

 ラークが叫ぶ。

 押し返されたヒュドラの双眸が不気味に光り、ブースターを発動させてワイバーンとペンドラゴンに巨腕のラリアットを繰り出す。

 「きゃあああっ!!!」

 「ぐうううっ!!!」

 轟音を立て施設を揺らして隔壁を突き破り、吹き飛んでいく二機。

 「やめてっ!!!お父さんっ!!!!」

 叫ぶマリア、だがラークの情報体はもはや父の面影を残していない。

 「実験ジッケン実験完璧なジッケン私は最高ノ科学者ナのダ、失敗は破在り得ナ亜いあい・・・!!!!」


 マリアは眼を閉じる。

 エリーゼルが言った通り、これはコンピューターが造った偽り。


 瞼に浮かぶ父の姿。

 いつも実験が終わるたび、心配そうに毛布を掛け、すまなそうに哀しそうに見ていた。

 どう接すればいいのか判らなかったのかもしれない。

 とても不器用な人だったのかもしれない。

 自分もだ。

 ずっと顔色を窺っていた。

 どうすればいいのか戸惑っていた。




 「・・・ごめんね。お父さん、あたしもどう娘として接すればいいのか判らなかったよ・・・」


 ゆっくりと瞳を閉じるマリア。

 マリアの身体が金色の光に包まれる。

 瞬時に破壊される拘束具。

 ツインテールのリボンは流れるように解け、桜色の髪は黄金色の輝きを讃え、たなびく。

 黄金のボディースーツを装着し、フワリと宙に浮かぶ。



 そして、金の瞳が開いた。