複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.93 )
日時: 2014/04/15 14:57
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: rWLc9jDy)

 
 機能経路が低下し、動くこともままならないハイドラを庇うように前面に出て守護するワイバーンD.R。

 上空からペンドラゴンがビームライフルで何度か狙撃するが、ヒィドゥンを覆うエナジーフィールドが尽く退けて、無効化してしまう。

 「くうっ!やはり効きませんわ、あのバリアーさえ如何にかすることができればいいのですが・・・!!」

 ヒィドゥンが斬られた腕をかざすと、機械群が増殖し、たちどころに復元し元通りにしてしまった。

 「・・・つくづく無駄な行為をするな、君たちは。いや、人間すべてか。この集積人格データの元になった人間、ラーク・アースカードもそうだった。非生産的な効率の悪い実験を繰り返していたよ。実に嘆かわしい」

 AIは静かに、威圧的に言葉を続ける。

 「・・・そこで私はひとつの結論に辿り着いた。ならば、わたしが制御してやろうと。最高の知識を持つ人工知能の私ならば、人も、竜も、すべてを管理できる。争いも搾取も無い、真の平穏な世界を築き上げられるのだ。素晴らしいだろう?はははははははっ!!!」

 それは最早データの羅列を逸脱したものだった。

 壊れてしまったのか、それとも元からそうだったのか、歪な存在に成り果ててしまっていた。



 「・・・さ、せな、い。・・・そん、な、こと絶対に・・・!!!」

 マリアが声を振り絞る。

 「そうですわ!!他人の借り物の知識でよく偉そうに言いますわね!!!」

 エリーゼルが憤慨する。

 「・・・自分たちの未来は自分たちで決める。他人に勝手に決められたくない」

 セツナが言い捨てる。



 「・・・そうか、だが君たちならば良い素材になると思うぞ。最高の実験体としてな!!!キルリアン・パルサーショック!!!!」

 ヒィドゥンのアンテナ装置から振動波が発せられると、ワイバーンとペンドラゴンの機体が著しく機能減衰を始めた。

 「ペンドラゴンが・・・!?くぅっ!?何ですの、身体の自由が!?」

 「ワイバーンD.R・・・!!この波動が竜種細胞に直接働きかけている・・・!?」

 セツナとエリ−ゼルも肉体の制御権を奪われてしまう。


 「エリっち!セツナっち!」

 マリアもハイドラも動けない。


 「はっはっはっ!!手始めに機体を分解解析だ!!!!!」

 ヒィドゥンが近づく。





 このままでは、狂った機械に殺されてしまう。

 未来が奪われてしまう。

 みんなの明日が。






 イリア、お母さん、お父さん。

 あたしは失ってしまうの?

 また。

 あの時のように。
















 「諦めちゃだめだよ、マリアお姉ちゃん」

 「そうよ、マリア。イリアの言うとおり、負けないで」

 時が停止したような世界。

 ハイドラのコックピットにマリアを支えるように現れた淡い光の影。

 「・・・イリア?・・・お母さん?」

 顔立ちが同じ女性とマリアに瓜二つな少女。

 ふたりが頷き、前方に視線を移す。

 マリアも視線の先のモニターを見る。


 ヒィドゥンの傍らに浮かび佇む光の影。

 白衣を着た男性に視える。

 「お父さん!!?」

 「・・・すまない、マリア。こんな事になってしまって・・・。すべてわたしの責任だ。いつかお前たちの役に立てようと残したデータ情報がウィルスで暴走してしまったようだ」


 白衣の男、ラークは優しくも困惑した表情をする。

 「ああ・・・。いざ逢うと何を話せばいいか判らない・・・。私は父親失格だ。お前にたくさん酷い事をしてしまった・・・」

 「・・・ううん、いいんだよ、お父さん。あたしとイリアを助けようとしてくれたんでしょう?こうしてイリアと逢えたから・・・。ありがとう、感謝してる」

 マリアはイリアと頷き合う。それを優しく見つめる母。

 「ああ・・・もう、時間がない。すまないマリア、行かなければ。エイミー、力を貸してくれ。このデカブツを止めるぞ」

 「はい、あなた」

 コックピットの女性が消え、ラークの傍に出現する。

 「え?お父さん、お母さん、何するの!?」

 戸惑うマリアを抱きしめ、押さえるイリア。

 「・・・マリアお姉ちゃん、ふたりを見送ってあげて・・・」

 「イリア・・・?」


 
 父と母が振り返る。



 笑顔で。





 ラークとエイミーが手を取り、ヒィドゥンの機体に溶け込むように姿が消えた。 



 









 ——————刹那。














 目を眩まんばかりのが閃光が一面を覆った。