複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.97 )
日時: 2014/04/17 14:34
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: J8OhyeKI)

 
 力がすべて。

 弱い者は貪られるだけ。

 強い者だけが生き残れる。

 少女は幼いながらも、世界の仕組みを理解した。

 理解せざる得なかった。

 極寒の地、ボロ布を羽織り、裸足でスラムを彷徨う日々。

 物乞い、売春、窃盗。

 そして殺人。

 生き残るために何でもやった。

 やるしかなかった。

 奪われるから。

 やらねば、ただ奪われるだけ。

 力が欲しかった。

 何者にも屈することの無い力が。

 大きな力が。

 この身に刻まれた、汚辱の痕を消してしまうほどの。
















 前後から繰り出される二機のドラグーンの凶刃。

 開口された顎の鋭惨な牙が、迫る二対の兇悪な剛斧の刃が。

 











 「なにっ・・・!?」

 「コイツはっ・・・!?」

 



 




 二機のドラグーンの凶刃は届く事は無かった。


 ティアマト・アプスーの機体から展開された巨大な禍々しい大蛇のアームがそれぞれの手にした武器に喰らい付き、万力のごとく強靱に締め上げて微塵も動かせなかったのだ。



 「ちっ!なんて馬鹿力なんだ、離れない!!・・・だったら、これはどうだ!!!メガロフィッシャーボム!!!!」

 ラハブの顎口型の両腕から魚雷状のミサイル弾が連続で発射され、ティアマトを零距離でロックオンする。



 「・・・オレと力比べかぁ?ビヒモスのパワーを舐めるなよおぉっ!!グランブルデストラクション!!!!」

 ビヒモスの二対の戦斧からロケットブースターが噴射し、巻き付く大蛇のアームを切り裂くと、加速させた二対の戦斧をティアマトに投擲する。

 
 何発ものミサイルと戦斧の剛刃が同時にティアマト・アプスーに着弾、直撃し、空中で巨大な爆発が巻き起こる。















 

 「・・・なるほど、それがあなたの『力』なのですね。ミカエラ」

 戦いを静観していたセレスはリンドブルムのモニターから粉煙が捲く宙を視る。







 「なんだとっ・・・?」

 「コイツ、化け物か・・・?」

 驚愕するディラとアシェル。


 爆炎の中からティアマト・アプスーが龍蛇の鎌首をくねらせ、何事も無く悠々と姿を現した。

 二機のドラグーンの攻撃でダメージを負った機体の破損は蠢く肉の塊に覆われ、痕跡すら残さずたちまちの内に修復してしまった。

 瞬間、ティアマトの龍蛇の口が一斉に開き、黒い閃光が放たれる。

 閃光は瞬時にラハブとビヒモスの機体を貫き穿ち、その四肢を寸断し、破壊した。

 「なっ!!!うああぁぁぁあっっっ!!?」

 「ぐぅううぅううっ!!?ミ、ミカエラ!てめえっ!!!覚えてやがれっ・・・!!!」

 爆炎と黒煙を上げて、海上に落ちる二体のドラグーン。










 一瞬で二機を戦闘不能に追い込んだティアマトはそれ以上追撃はせず、最早用は無いと言った風に己を見据える白金の竜機に向き直る。



 「・・・次は、お前だ・・・。・・・セレス・・・」




 ミカエラの暗闇に光る鋭利な眼光が目の前の獲物を捉える。