複雑・ファジー小説

Re: 竜装機甲ドラグーン ( No.99 )
日時: 2014/04/17 14:31
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: J8OhyeKI)

 ティアマトの双曲刀とリンドブルムの双脚剣が咬み合い、打ち鳴らされ、互いを切り刻むため振るわれる。

 しかし剣戟と自在に襲い来る龍蛇の触首が、破壊してもたちどころに再生してしまい、徐々にティアマトが優勢になる。

 「くくくっ!どうした、セレス!?動きに精彩さが欠けてきたぞ!!そらっ!貴様のドラグーンが無様に壊れていくぞ!!!」

 ティアマトの龍蛇が放つ黒い閃光がリンドブルムの装甲を貫き、砕き飛ばす。

 そこに織り込まれる猛烈な連撃。

 苛烈な攻撃の応酬に追い込まれ、少しずつ劣勢になり雲行きが怪しくなる。


 その様子を固唾を飲んで見守るスフィーダとリヴァネ。

 そしてもうひとり、この状況を諦観する人物がリヴァイアサンブリッジルームで事の成り行きを観察していた。

 「艦長、先程撃墜されたパイロット二名の生存を確認、ただちに収艦されました。ですがドラグーンは大破しており、即急な修復措置が必要と思われます」

 オペレーターのひとりが報告するが、モニターから顔を話さず、相槌を打つリヴァイアサン艦長アリーザ・イベリウス。

 「そう、適当に処理しといて。今、いいとこだから邪魔しないで」

 そう言ってモニターに見入る。

 「・・・ミカエラ。わざわざ貴女に貴重な『オリジナル』をあげたのよ?それなりの成果を見せて貰わないと・・・」

 冷たい目を鋭く細めるアリーザ。










 ティアマトの振り下ろされた強刃にリンドブルムのブレードが叩き折られ、反動でよろけた眼前に突き付けられる曲刀。

 「クククッ。セレス、そろそろダンスもフィナーレじゃないか?それともアンコールを希望するか?」

 ミカエラが満足そうに、見下すようにセレスに問いかける。

 「・・・そうですね。そろそろ良い頃合いでしょう。イベリウス艦長、よろしいですか?」

 セレスがモニターからブリッジに繋ぐとアリーザに指示を仰ぐ。

 「そうね、もういいでしょう。『解放』していいわ、セレス。貴女の『ドラグ・バーラー』を」

 アリーザが言う。

 通信を共有しているミカエラの表情が険しくなり、眉を潜める。

 「・・・何だと・・・!?どういう事だ、セレス・・・!!」

 「聞いた通りです、ミカエラ。この実働テストはあなたのバーラーの機能性能の確認と私のバーラーの起動実験も兼ねているのですよ。まあ、知らされてないのも仕方ないですね、ふふっ」

 セレスは気の毒そうに、しかし馬鹿にしたようにせせら笑う。




 「・・・私は当て馬という事か・・・?だが、ここで『力』を示さねば・・・私は・・・」

 ミカエラはブツブツと呟く。





 「さあ、特別にあなたにもお披露目いたしましょう。世界で五体目のオリジナル、私のドラグ・バーラー『シルシュ』を!!!!」

 セレスの言葉と共に、リンドブルムの双眸が怜悧な輝きを放つ。

 機体を黒茶けた悍ましい肉の塊が覆い、装甲と同一化すると破壊された各所が再生して白金の外装を刺々しく、禍々しい風貌に変化させた。

 コックピットのセレスに機械の触手が絡みつき、全身に不気味な脈動する血管を浮き上がらせる。

 「ふふふっ、凄い力を感じますね。これが原初の竜の力・・・。名前は、そうですね。ウィグルにしましょう。リンドブルム・ウィグル。さあ、ミカエラ!!早速、あなたで試さして貰います!!!」



 異様かつ凶悪に様変わりしたリンドブルム・ウィグルが大きく両腕を伸ばすと六枚の刃の巨翼が広がり、歪な輝きを照らし出した。